10.04.2010

M&A Basics

表題の所内のセミナーに出席しました。セミナーの概要に加え、自らの経験に基づく点にも触れながら、気になった点を取り出して書き留めておこうと思います。

I. 買収価格
Enterprise Value + Cash - Indebtedness - Transaction Expenses - Escrow Payment + Working Capital Adjustment = Purchase Price Payment (Equity Value)

1. Enterprise Value
通常は、EBITDAのx倍(なお、EBITDAの算定の基礎となるEarningsをどの程度の期間でみるかも決定する必要があります。直近12ヶ月とすることが多いもののそれより短期の場合もあります。)に、その他の要素を検討します。例えば、Non-recurring expenses, Excessive compensation, Professional fees, Severance expenses.

2. Working Capital Adjustment
通常は、Current Assets (e.g. A/R) -(minus) Current liabilities (e.g. A/P) で算出されます。

3. Escrow Payments
Dealing with PE Fundsの稿でも述べた通り、General Escrowの他、特定の訴訟や環境問題だけのためのEscrowを設けることもあります。

4. Deferred Purchase Price
これには、Earnouts ProvisionsやEmployment Agreementに基づくボーナスの支払い分等が挙げられます。

5. EVについてStart-upsの場合の例外
Revenueで計算されることが多いようです。起業してすぐ利益(Earnings)が出ることは稀であるため。

II. Purchase Agreementのドラフティングにあたっての留意点
この点は、本当に私の主観的基準により取り上げた留意点ですので、私以外の方に参考になる部分は少ないかもしれません。ただ、これは特にアメリカでの取引だけでなく、世界中どこでの取引でも当てはまる部分が多いと思われます。

1. 定義条項
  • "Knowledge":"Buyer", "Seller"だけではなく、その組織の中の誰のKnowledgeなのかという点を明確にする。例えば、Senior Management(これ自体も定義が必要)、CEOなど。さらに、Actual v. Constructiveなのかという点も交渉事項になりえます。
  • "Material Adverse Effect":近年、たくさんの裁判例がでているところであり、綿密なドラフティングが必要なところです。買主としては、出来るだけ多方面から予想しうる事態を出来るだけ明確にした形で規定する必要があります。
  • "Losses": Consequential/Punitive, Diminution in value/"multiple of earnings", Cost to bring business into compliance 等
2. 表明保証条項
  • Disclosure scheduleにおいて、"Reasonably apparent" v. explicit disclosureか。
  • その他、通常の表明保証事項のリストがありましたが、申し訳ありませんが、割愛させて頂きます。
3. Pre-Closing Covenants
  • No-shop clause、HSR等
  • Seller's Notice of Changesにおいて、Sellerが通知をした後の処理については留意点(一定の期間に何らかのアクションをとる義務がBuyerにあるのか、Closeした後アクションを取ったとき等)
4. Indemnity
  • Duration of Survival Periods, "fundamental" representation (eg. organization, due authority, capitalization) については無期限、またその他Statute of Limitationを考慮、その他については一定の期間を設けるの通常。 
  • Cap & Basket: Basketの中には、Deductible v. Tipping (ヒットするとそれまでの分も補償する必要がある仕組み。)。また、fundamental rep等を例外とすることもあり。
5. その他
  • Foreign antitrust regulations
  • Transfer Pricing
  • Deemed dividend issue
  • Fiduciary duties of directors

9.26.2010

442 -Live with Honor, Die with Dignity-

先日、大学の同窓会の主催で、上記のタイトルの映画(邦題:「442日系部隊・アメリカ史上最強の陸軍」)の鑑賞会が開かれ、観に行ってきましたので、ご紹介します。
第2次世界大戦中の第442部隊の目覚ましい活躍については、こちらをご覧下さい。

同映画を制作されたすずきじゅんいち監督もいらして下さり、この映画を制作した目的、撮影の裏話等のお話を聞け、大変貴重な機会でした。

この映画は、アメリカに住む日系アメリカ人の話ですが、是非、日本に住んでいる日本人の方に観て頂きたい作品だと感じました。監督も同じことを言っておられました。
日本にいると意識することがほとんどないと思いますが、この映画を通じて、日本人であることとは何かということを強く問いかけられます。また、当時の日系アメリカ人が、アメリカ人であることを否定され、自己のアイデンティティの拠り所を失うことがどれだけ辛いことかということも強く訴えかけられます。
日本に住んでいては、通常感じることの出来ない感覚を体感することが出来る映画だと思います。

私は、子供の頃4年半程ロンドンにいましたが、当時も、言葉も習慣も考え方も異なる人たちに囲まれ、日本人であることを否が応でも強く意識させられました。ただ、帰国後は、まだ成長しきっていなかったというのもあるかもしれませんが、そのような意識は霧散してしまいました。しかし、今またアメリカに滞在していると、アイデンティティという概念がいかに重要なのかというのを、強く意識させられる日々です。特に、自分の子供たちは、今のところ人生の大部分をアメリカで暮らしています。彼らは自分のアイデンティティをどこに求めるのかということを考えだすと、悩みは尽きません。

今後どんどんグローバル化するといわれている世界の中では、自分のアイデンティティをどこに求めるのかというのは、益々重要になってくるのではないかと思われます。
このようなことをつらつらと考えるいい機会を与えてくれた映画でした。

Dealing with Private Equity Funds

米国のPEファンドの現況及びPEファンドを相手方とするM&A取引における留意点について概観します。

今後PEファンドがポートフォリオ会社を売却するという機会が増えてくると思われます。日本の企業にとっては、米国での事業展開を考える上で、かかる会社を取得するというのはひとつの選択肢になるかと思われます。

I. 米国におけるPEファンドの現況

Limited Partners (Silent Investorsとも呼ばれる。)
  • 主に、Pension funds (e.g. CALPERS), insurance companies, university endowments (e.g. Harvard Endowment Fund), and major charitable organizations, and some high net worth individualsがLPとして出資を行う。特に、最近増えているのが、中国や中東のSovereigns。世界のSevereignsが保有している資産総額は、USD 30.7T。当然のことながら、彼らにアプローチをするローファームも多いようです。
  • 投資期間は、主に7~10年程度。
  • UBTI (Unrelated business taxable income), VCOC (Venture Capital Operating Company)として認められ、非課税となるよう仕組むのが一般的。
PE Fund Management
  • GPが受け取るFeeとしては、2% Management Fee又は20% Carried Interest (Partnershipから生じる利益の内初期投資額を除いたもの)が通常。
  • 業界全体で約USD 1.0 trillionもの資金(Dry Powder)が眠っていると言われている。
  • LPの投資期間が7~10年で、過去2年間の異常事態により、ポートフォリオの売買ができなかったことから、今後ポートフォリオ会社の売却が増えることが予想される。
Leverage/Financing Acquisitions
  • 歴史的には30%程度がEquity Investment、それがバブル時に10%になり、現在は50%又はそれ以上つまなくてはいけない状態が続いている。
  • さらに、LOIのfinancing conditionsの記載方法が厳しくなってきている(留保事項が多い。)。
II. PEファンドとのM&A取引の際の留意事項
1.PEファンドからポートフォリオ会社を購入する場合
  • 売却先としてはStrategic BuyerとFinancial Buyer(また別のPEファンド等)の二通りが考えられますが、Strategic Buyerの方が通常シナジー効果をみて、高値でbidしてくることが多いので、PEファンドからすると、Strategic Buyerに売却したいと考える場合が多い。
  • Purchase Agreementを作成し、交渉する際に留意するべきなのは、Indemnity Clauseです。もちろん、通常のM&Aにおける重要性は否定しませんが、PEファンドから購入する場合には、売却後、同ファンドは売却金をLPに償還するのが通常です。いくらIndemnity clauseで売主の補償義務を規定していても、償還当時、実際当該条項が適用される事象が発生ししていなかったり、発生していたとしてもそのことをファンドが知らなければ、かかる償還は有効となってしまい(例えば、California Corporation Code Sec. 15905.09. Delaware Code Chapter 6. § 15-309)、Indemnity Clauseが有名無実化してしまう可能性があります。
  • この点に、対応するために有効なのが、escrowです(通常、2.5%~20%程度)。さらに、特定の事項(環境や係属している訴訟など)やworking capitalだけのために別途escrowを設けることもあります。
  • その他、保険をかけることもありますが、保険料(premium)が高いことから一般的ではありませんが、特定の事項(Product LiabilityやEnvironmental Conditions)を対象とするのであれば、有益である場合もあります。
2.PEファンドへ子会社等を売却する場合
  • 上記で触れたように、LOIのfinancing conditionsの記載方法が厳しくなっているのは、PEファンドがfinanceをつけるのが難しくなって来ていることの現れのようです。
  • 銀行とのterm sheetsを見せてもらう、当該ファンドまたはSponsorの銀行とのtrack recordのチェックということが考えられますが、それ以上に、このようなfinancing arrangementは、特にこのご時勢、状勢がすぐ変わるようで、これだけではあまり意味がない場合も多いようです。
  • 今のところ、最も強力な手段は、reverse break up feeを設定すること。一般的な相場としては、1%から3%ですが、既存のビジネスに多大な影響があるとか、経営陣,従業員の地位が不安定になる恐れが大きいとか主張して、もっと大きい額を勝ち取れるよう交渉して行くのが得策のようです。
  • LPからもcommitment letterを取得すること(が、リーマンショック以降これに応じるLPは少ないとのこと。)も考えられます。
  • PEファンドは、通常non-compete agreementsを締結したがらないが、限定した事項であれば締結に応じる場合もあるようです。

9.06.2010

Malibu Creek State Park

引き続き、休日の過ごし方のご紹介。

本日は、Malibu Creek State Parkに、hikingに行ってきました。
同公園にMain Parkingがあるのですが、我々は、公園の反対側の
Agoura Hills市のCrags Rd. & Lookout Dr.に車を停め、出発しました。


道は、ずっとこのような感じで、小さな子供でも歩けますし、我々はStroller(Bugaboo)も押して行けました。但し、大きな砂利のあるところもあるので、車輪の小さなStrollerだと少し苦労するかもしれません。


あと、サイクリングをしている人もいました。平坦な道なので、これもかなり気持ち良さそうでした。


平坦な道ではあるのですが、今日の気候(快晴)もあり、日なたは、くらくらするくらいの直射日光が照りつけていたのですが、

このような木陰の道に入ると、風が冷たく、かなり快適でした。

















20分くらいでM*A*S*H Site(テレビプログラムM*A*S*Hの撮影場所)に到着します。大人だけであれば、本当にすぐだと思います。


ここに、ピクニックテーブルがあり、持って来たお弁当(Turkey Sandwichではなく、おにぎりと卵焼き等和食!)を食べ、休憩をした後、引き返し、途中、Malibu Lakeの方に寄り道をして、元の場所に戻りました。

家から40分くらいの場所にこのような自然溢れた場所があるのは、本当に貴重なことだと思うので、また来たいと思っています。

なお、ここに来る途中には、海を臨めるPacific Coast Hwy、断崖の脇を通るMalibu Canyon Roadと景色がいい道が続くので、ドライブに来るだけでも楽しめると思います。また、上記二つの道が交差する場所にあるPepperdine Universityの中も素晴らしい景色が広がっています(すみません、適当な写真がありません。冬休みの間でなければ、同大学に関係のない人でも立ち入り自由です。)

9.05.2010

Circus Vargas

本ブログの本筋ではありませんが、アメリカ文化のご紹介として。

この週末はLabor Day Weekendでアメリカでは3連休になるところがほとんどです。このLong Weekendを利用して、家族と一緒にサーカスを観に行ってきました。


Cirque du Soleil等のような洗練されたサーカスとは対極に位置するような、昔ながらのサーカスでしたが(空中ブランコとか、ピエロがコメディやったりとか。)、子供たちも含めかなり楽しめました。
びっくりしたのは、空中でのショーも命綱つけずにやりますし(普通サーカスってそうですかね?)、比較的小さなテントで間近で彼らの演技を観れるので、演技を純粋に楽しむというより、失敗して事故が起きないかというスリルを楽しんでいるというのが正直な感想かもしれません。もちろん、どのパフォーマーも完璧に演技していましたが。

特に、8歳の男の子が、バイクを小さい鉄の籠の中でぐるぐる回りながら乗り回すパフォーマンスは、2児の父としては、恐くて観ていられませんでした。。。。

因みに、右の女性もバイクで籠の中をぐるぐる回ります。しかも左の男性の乗っているバイクと同時に。。




ショーの最初にアメリカ国家を斉唱したり、ピエロのコメディも観客参加型で、選ばれた人たちも堂々と演技していたり、巨大な容器に入っているポップコーンを家族みんなで食べたり、観客も大盛り上がりで、アメリカナイズされた(といっても、半分くらいの観客はメキシコ系でした。)休日の過ごし方でした。

常にロサンゼルスで催行しているわけではないようですが、機会があればお勧めします。

9.03.2010

Directors' Unanimous Consent v. Minutes of Board of Directors

USのCorporationにおいて(少なくともCalifornia州とDelaware州において)、取締役会にて決議を行う場合、Directors' Unanimous Consentを取得する場合(Cal Corp. Code 307(b)、Del Corp Law 141(f) )と実際にBoard of Directors Meetingを開く場合の二通りがあります。

Directors' Unanimous Consentの場合は、実際に集まらなくてもいい反面、全員からConsentにサインをもらう必要があります。但しこのサインはファックスやPDFでもらうことで足ります。

Meetingを実際に開く場合には、議事録にはSecretaryのみがサインすればよいので、実際に開くのはスケジュール調整等大変ですが(ちなみに、一つの場所に集まる必要はなく、電話やビデオカンファレンスで参加することも可能です。)、記録を残す段階ではConsentより負担は少ないと言えます。

議論が必要であるか、どれだけサインがもらいやすいかによりどちらの方法を採るべきかを決める必要があると思われます。

因みに、日本ではどうかというと、Consentに相当するのは取締役会の書面決議かと思いますが、これは予め定款の定めが必要となります(会社法370条)。なお、実際の取締役会を開催した場合にも出席者全員の署名(記名捺印)が必要なので(会社法369条3項)、どちらの方法を採るにせよ、署名を集める手間があることになります。なお、日本では電磁的記録による方法で取締役会議事録を作成することも出来ますが、電子署名が必要となります(この点、PDF等で済むUSの運用とは異なりますね。民訴法の問題ですかね。)。この方法はまだあまり普及していないという理解です。

8.30.2010

LLC v. Corporation

改めてご挨拶

大変ご無沙汰してしまいました。
5月末に最後の投稿をして以降、6月はW杯TV観戦、7月は妻のCalifornia Bar受験の応援、8月は夏休みとその後山積した仕事の片付けをしていたらあっという間に3ヶ月が経過してしまいました。
継続的にブログをつけられている方の気力がいかにすごいかを、改めて痛感した3ヶ月間でした。
その間に読んだ雑誌や経験したこと等も少なからずありますので、徐々にまた復活できればと思います。また、妻の受験中に、私がCal Bar (カリフォルニア州の司法試験)を受験していた際のことも思い出しましたので、私の受験体験記も、機会を見つけて紹介できればと思っています。

日本企業の米国子会社の法形態について

さて、復帰一回目は、表題のとおり、比較的基本的な話題を提供したいと思います。
日本の企業が、初めて米国(例えば、カリフォルニア州)に進出することを決めた場合、米国に拠点を設けることになると思いますが、かかる拠点をどのような法形態にするべきかという問題が生じます。

法人vs支店

まず、法人の形態を採るか、支店の形態を採るかという問題があります。
もし、かかる米国の拠点が、情報を収集するだけだとか、契約の主体になったり、利益を出すことを想定していない様な場合には、設置が簡単な支店の形態を採ることもあり得るかと思います。
しかし、上記のような特殊の場合でない限り、一般的にはお勧めできません。まず、支店である以上同一法人となるので、米国でビジネスをしていく上で生じるリスクは全て日本の法人にも遡及することになります。また、利益を出した場合にも、米国において、日本企業を含むforeign corporationに対してBranch Profit Taxが課せられることになり、支店であることのメリットが生かせません。

LLC vs Corporation

ここからが本題ですが、米国子会社に法人という法形態を採るとしても、LLCかCorporationのどちらにするか、という問題があります。結論からいいますと、大多数の日本企業はCorporationを選択しています。

LLCを採用することの最大のメリットは、パススルー課税(構成員課税)にあります。これにより、LLCで生じた利益は、LLCの段階では課税されず、構成員(つまりCorporationでいう株主)の段階でのみ課税されることになります。
しかし、この形態を採ると、日本企業が構成員になる場合には、日本企業は米国において税務申告をしなければいけなくなります。この場合、損益は合算されるので日本でのビジネスについてまで米国の税務当局(IRS)に申告しなければいけなくなり、大抵の日本企業は,これを敬遠します。

また、Corporationの場合には、Corporationの段階でIncome Taxが課税され、その後利益が配当として株主に配当された段階でも益金(所得)として認識され法人税(所得税)が課されるのが原則(2段階課税)ですが、日本法上、外国子会社配当益金不算入制度が平成21年の税制改正で導入され、外国子会社から受ける配当の一部(95%)を益金に算入しないことが認められています(同制度導入以前も、間接税額控除制度がありました。)。つまり、外国子会社の配当のほとんどを、法人税の対象となる益金として参入しなくてよく、2段階で課税されることがなくなりました。因みに、LLCでも上記制度は適用されるようです。詳細はこちら

さらに、親子会社間配当については原則として、源泉地国において、10%の限度税率が課されますが、日米租税条約により、50%超の株式を保有するCorporationで一定の要件を満たす配当については、免税措置が執られるようになりました。日本企業の米国子会社の多くは、これに該当すると思われますが、因みに、10%~50%の保有割合の場合には、5%の源泉徴収が課されることになります。

上記のように、多くの場合、日本法上の外国子会社配当益金不参入制度と日米租税条約上の源泉徴収免除措置により、Corporationを選択する際の、LLCと比較した場合のデメリットが、ほぼなくなっており、これが、日本企業の米国子会社の法形態としては、圧倒的にCorporationが多い理由となっているようです。

ちなみに、S Corporationという法形態もありますが、これは株主がUS ResidentsかUS Citizens(個人)でなければならないので、日本企業が米国に拠点を置く際にはほぼ用いられません。

なお、Corporationの形態を採るとして、どこの州で設立するかという問題もあります。この点については稿を改めたいと思います。