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1.28.2011

2011 HSR Filing Threshold

今年のHSR filingの基準額が公表されたので、備忘録まで。

詳細は、Googleに入れると情報がたくさん出てきますが、一例はこちら

1.11.2011

US Takeover Guide

またまた簡単な投稿で恐縮ですが、表題の件に関するクリフォードチャンスのメモを見つけましたので、備忘のためアップします。

実務の流れに沿って、検討するべきこと、なすべきことが記載されており、参考になるかと思います。

1.09.2011

Doing Business in the United States

皆様、明けましておめでとうございます。
今年1回目の投稿が、お正月から10日が過ぎようとしている時点で、今年の更新頻度の低さを予想しているかのようですが、今年も、「可能な範囲で」、アメリカの法律問題や文化等を紹介していければと思っています。

さて、今年1回目が簡単な投稿で恐縮ですが、Squire Sanders法律事務所のメモを見つけましたので、紹介します(私が所属している事務所とは無関係です。)。
既に、このブログでも触れた論点も多いですが(Business EntitiesやEmployment Issuesなど。)、日本企業が、米国に進出するにあたり検討するべき論点を抽出できるという点では有用なメモかと思います。もちろんここに掲げられているのが全てではない場合がほとんどだと思います。

10.04.2010

M&A Basics

表題の所内のセミナーに出席しました。セミナーの概要に加え、自らの経験に基づく点にも触れながら、気になった点を取り出して書き留めておこうと思います。

I. 買収価格
Enterprise Value + Cash - Indebtedness - Transaction Expenses - Escrow Payment + Working Capital Adjustment = Purchase Price Payment (Equity Value)

1. Enterprise Value
通常は、EBITDAのx倍(なお、EBITDAの算定の基礎となるEarningsをどの程度の期間でみるかも決定する必要があります。直近12ヶ月とすることが多いもののそれより短期の場合もあります。)に、その他の要素を検討します。例えば、Non-recurring expenses, Excessive compensation, Professional fees, Severance expenses.

2. Working Capital Adjustment
通常は、Current Assets (e.g. A/R) -(minus) Current liabilities (e.g. A/P) で算出されます。

3. Escrow Payments
Dealing with PE Fundsの稿でも述べた通り、General Escrowの他、特定の訴訟や環境問題だけのためのEscrowを設けることもあります。

4. Deferred Purchase Price
これには、Earnouts ProvisionsやEmployment Agreementに基づくボーナスの支払い分等が挙げられます。

5. EVについてStart-upsの場合の例外
Revenueで計算されることが多いようです。起業してすぐ利益(Earnings)が出ることは稀であるため。

II. Purchase Agreementのドラフティングにあたっての留意点
この点は、本当に私の主観的基準により取り上げた留意点ですので、私以外の方に参考になる部分は少ないかもしれません。ただ、これは特にアメリカでの取引だけでなく、世界中どこでの取引でも当てはまる部分が多いと思われます。

1. 定義条項
  • "Knowledge":"Buyer", "Seller"だけではなく、その組織の中の誰のKnowledgeなのかという点を明確にする。例えば、Senior Management(これ自体も定義が必要)、CEOなど。さらに、Actual v. Constructiveなのかという点も交渉事項になりえます。
  • "Material Adverse Effect":近年、たくさんの裁判例がでているところであり、綿密なドラフティングが必要なところです。買主としては、出来るだけ多方面から予想しうる事態を出来るだけ明確にした形で規定する必要があります。
  • "Losses": Consequential/Punitive, Diminution in value/"multiple of earnings", Cost to bring business into compliance 等
2. 表明保証条項
  • Disclosure scheduleにおいて、"Reasonably apparent" v. explicit disclosureか。
  • その他、通常の表明保証事項のリストがありましたが、申し訳ありませんが、割愛させて頂きます。
3. Pre-Closing Covenants
  • No-shop clause、HSR等
  • Seller's Notice of Changesにおいて、Sellerが通知をした後の処理については留意点(一定の期間に何らかのアクションをとる義務がBuyerにあるのか、Closeした後アクションを取ったとき等)
4. Indemnity
  • Duration of Survival Periods, "fundamental" representation (eg. organization, due authority, capitalization) については無期限、またその他Statute of Limitationを考慮、その他については一定の期間を設けるの通常。 
  • Cap & Basket: Basketの中には、Deductible v. Tipping (ヒットするとそれまでの分も補償する必要がある仕組み。)。また、fundamental rep等を例外とすることもあり。
5. その他
  • Foreign antitrust regulations
  • Transfer Pricing
  • Deemed dividend issue
  • Fiduciary duties of directors

9.26.2010

Dealing with Private Equity Funds

米国のPEファンドの現況及びPEファンドを相手方とするM&A取引における留意点について概観します。

今後PEファンドがポートフォリオ会社を売却するという機会が増えてくると思われます。日本の企業にとっては、米国での事業展開を考える上で、かかる会社を取得するというのはひとつの選択肢になるかと思われます。

I. 米国におけるPEファンドの現況

Limited Partners (Silent Investorsとも呼ばれる。)
  • 主に、Pension funds (e.g. CALPERS), insurance companies, university endowments (e.g. Harvard Endowment Fund), and major charitable organizations, and some high net worth individualsがLPとして出資を行う。特に、最近増えているのが、中国や中東のSovereigns。世界のSevereignsが保有している資産総額は、USD 30.7T。当然のことながら、彼らにアプローチをするローファームも多いようです。
  • 投資期間は、主に7~10年程度。
  • UBTI (Unrelated business taxable income), VCOC (Venture Capital Operating Company)として認められ、非課税となるよう仕組むのが一般的。
PE Fund Management
  • GPが受け取るFeeとしては、2% Management Fee又は20% Carried Interest (Partnershipから生じる利益の内初期投資額を除いたもの)が通常。
  • 業界全体で約USD 1.0 trillionもの資金(Dry Powder)が眠っていると言われている。
  • LPの投資期間が7~10年で、過去2年間の異常事態により、ポートフォリオの売買ができなかったことから、今後ポートフォリオ会社の売却が増えることが予想される。
Leverage/Financing Acquisitions
  • 歴史的には30%程度がEquity Investment、それがバブル時に10%になり、現在は50%又はそれ以上つまなくてはいけない状態が続いている。
  • さらに、LOIのfinancing conditionsの記載方法が厳しくなってきている(留保事項が多い。)。
II. PEファンドとのM&A取引の際の留意事項
1.PEファンドからポートフォリオ会社を購入する場合
  • 売却先としてはStrategic BuyerとFinancial Buyer(また別のPEファンド等)の二通りが考えられますが、Strategic Buyerの方が通常シナジー効果をみて、高値でbidしてくることが多いので、PEファンドからすると、Strategic Buyerに売却したいと考える場合が多い。
  • Purchase Agreementを作成し、交渉する際に留意するべきなのは、Indemnity Clauseです。もちろん、通常のM&Aにおける重要性は否定しませんが、PEファンドから購入する場合には、売却後、同ファンドは売却金をLPに償還するのが通常です。いくらIndemnity clauseで売主の補償義務を規定していても、償還当時、実際当該条項が適用される事象が発生ししていなかったり、発生していたとしてもそのことをファンドが知らなければ、かかる償還は有効となってしまい(例えば、California Corporation Code Sec. 15905.09. Delaware Code Chapter 6. § 15-309)、Indemnity Clauseが有名無実化してしまう可能性があります。
  • この点に、対応するために有効なのが、escrowです(通常、2.5%~20%程度)。さらに、特定の事項(環境や係属している訴訟など)やworking capitalだけのために別途escrowを設けることもあります。
  • その他、保険をかけることもありますが、保険料(premium)が高いことから一般的ではありませんが、特定の事項(Product LiabilityやEnvironmental Conditions)を対象とするのであれば、有益である場合もあります。
2.PEファンドへ子会社等を売却する場合
  • 上記で触れたように、LOIのfinancing conditionsの記載方法が厳しくなっているのは、PEファンドがfinanceをつけるのが難しくなって来ていることの現れのようです。
  • 銀行とのterm sheetsを見せてもらう、当該ファンドまたはSponsorの銀行とのtrack recordのチェックということが考えられますが、それ以上に、このようなfinancing arrangementは、特にこのご時勢、状勢がすぐ変わるようで、これだけではあまり意味がない場合も多いようです。
  • 今のところ、最も強力な手段は、reverse break up feeを設定すること。一般的な相場としては、1%から3%ですが、既存のビジネスに多大な影響があるとか、経営陣,従業員の地位が不安定になる恐れが大きいとか主張して、もっと大きい額を勝ち取れるよう交渉して行くのが得策のようです。
  • LPからもcommitment letterを取得すること(が、リーマンショック以降これに応じるLPは少ないとのこと。)も考えられます。
  • PEファンドは、通常non-compete agreementsを締結したがらないが、限定した事項であれば締結に応じる場合もあるようです。

9.03.2010

Directors' Unanimous Consent v. Minutes of Board of Directors

USのCorporationにおいて(少なくともCalifornia州とDelaware州において)、取締役会にて決議を行う場合、Directors' Unanimous Consentを取得する場合(Cal Corp. Code 307(b)、Del Corp Law 141(f) )と実際にBoard of Directors Meetingを開く場合の二通りがあります。

Directors' Unanimous Consentの場合は、実際に集まらなくてもいい反面、全員からConsentにサインをもらう必要があります。但しこのサインはファックスやPDFでもらうことで足ります。

Meetingを実際に開く場合には、議事録にはSecretaryのみがサインすればよいので、実際に開くのはスケジュール調整等大変ですが(ちなみに、一つの場所に集まる必要はなく、電話やビデオカンファレンスで参加することも可能です。)、記録を残す段階ではConsentより負担は少ないと言えます。

議論が必要であるか、どれだけサインがもらいやすいかによりどちらの方法を採るべきかを決める必要があると思われます。

因みに、日本ではどうかというと、Consentに相当するのは取締役会の書面決議かと思いますが、これは予め定款の定めが必要となります(会社法370条)。なお、実際の取締役会を開催した場合にも出席者全員の署名(記名捺印)が必要なので(会社法369条3項)、どちらの方法を採るにせよ、署名を集める手間があることになります。なお、日本では電磁的記録による方法で取締役会議事録を作成することも出来ますが、電子署名が必要となります(この点、PDF等で済むUSの運用とは異なりますね。民訴法の問題ですかね。)。この方法はまだあまり普及していないという理解です。

8.30.2010

LLC v. Corporation

改めてご挨拶

大変ご無沙汰してしまいました。
5月末に最後の投稿をして以降、6月はW杯TV観戦、7月は妻のCalifornia Bar受験の応援、8月は夏休みとその後山積した仕事の片付けをしていたらあっという間に3ヶ月が経過してしまいました。
継続的にブログをつけられている方の気力がいかにすごいかを、改めて痛感した3ヶ月間でした。
その間に読んだ雑誌や経験したこと等も少なからずありますので、徐々にまた復活できればと思います。また、妻の受験中に、私がCal Bar (カリフォルニア州の司法試験)を受験していた際のことも思い出しましたので、私の受験体験記も、機会を見つけて紹介できればと思っています。

日本企業の米国子会社の法形態について

さて、復帰一回目は、表題のとおり、比較的基本的な話題を提供したいと思います。
日本の企業が、初めて米国(例えば、カリフォルニア州)に進出することを決めた場合、米国に拠点を設けることになると思いますが、かかる拠点をどのような法形態にするべきかという問題が生じます。

法人vs支店

まず、法人の形態を採るか、支店の形態を採るかという問題があります。
もし、かかる米国の拠点が、情報を収集するだけだとか、契約の主体になったり、利益を出すことを想定していない様な場合には、設置が簡単な支店の形態を採ることもあり得るかと思います。
しかし、上記のような特殊の場合でない限り、一般的にはお勧めできません。まず、支店である以上同一法人となるので、米国でビジネスをしていく上で生じるリスクは全て日本の法人にも遡及することになります。また、利益を出した場合にも、米国において、日本企業を含むforeign corporationに対してBranch Profit Taxが課せられることになり、支店であることのメリットが生かせません。

LLC vs Corporation

ここからが本題ですが、米国子会社に法人という法形態を採るとしても、LLCかCorporationのどちらにするか、という問題があります。結論からいいますと、大多数の日本企業はCorporationを選択しています。

LLCを採用することの最大のメリットは、パススルー課税(構成員課税)にあります。これにより、LLCで生じた利益は、LLCの段階では課税されず、構成員(つまりCorporationでいう株主)の段階でのみ課税されることになります。
しかし、この形態を採ると、日本企業が構成員になる場合には、日本企業は米国において税務申告をしなければいけなくなります。この場合、損益は合算されるので日本でのビジネスについてまで米国の税務当局(IRS)に申告しなければいけなくなり、大抵の日本企業は,これを敬遠します。

また、Corporationの場合には、Corporationの段階でIncome Taxが課税され、その後利益が配当として株主に配当された段階でも益金(所得)として認識され法人税(所得税)が課されるのが原則(2段階課税)ですが、日本法上、外国子会社配当益金不算入制度が平成21年の税制改正で導入され、外国子会社から受ける配当の一部(95%)を益金に算入しないことが認められています(同制度導入以前も、間接税額控除制度がありました。)。つまり、外国子会社の配当のほとんどを、法人税の対象となる益金として参入しなくてよく、2段階で課税されることがなくなりました。因みに、LLCでも上記制度は適用されるようです。詳細はこちら

さらに、親子会社間配当については原則として、源泉地国において、10%の限度税率が課されますが、日米租税条約により、50%超の株式を保有するCorporationで一定の要件を満たす配当については、免税措置が執られるようになりました。日本企業の米国子会社の多くは、これに該当すると思われますが、因みに、10%~50%の保有割合の場合には、5%の源泉徴収が課されることになります。

上記のように、多くの場合、日本法上の外国子会社配当益金不参入制度と日米租税条約上の源泉徴収免除措置により、Corporationを選択する際の、LLCと比較した場合のデメリットが、ほぼなくなっており、これが、日本企業の米国子会社の法形態としては、圧倒的にCorporationが多い理由となっているようです。

ちなみに、S Corporationという法形態もありますが、これは株主がUS ResidentsかUS Citizens(個人)でなければならないので、日本企業が米国に拠点を置く際にはほぼ用いられません。

なお、Corporationの形態を採るとして、どこの州で設立するかという問題もあります。この点については稿を改めたいと思います。

5.06.2010

Earn-Out Provisions

本稿では、昨年末のケースを取り上げ、Earn-Out Provisionsを契約書中に規定する際に留意するべき点をお伝えしたいと思います。

Earn-Out Provisionsとは、M&A取引等の際に、クロージング時に一括して買収価格を支払って取引が完了するのではなく、将来の業績に応じて契約内容を調整することを約する規定です。よくある例としては、クロージング時に○ドル支払い、その後○年間にわたり、将来の業績に応じて○○の利益の○%を支払うというような内容がこれに該当します。

Airbourne Health, Inc. and Weil, Gotshal & Manges LLP v. Squid Soap, LP (November 23, 2009)においては、Airbourne(買主)がSquid Soap(売主)が開発したproductsに関する資産(「本件資産」)を購入する際の資産譲渡契約(Asset Purchase Agreement、「本件契約」) 中のEarn-Out Provisionが問題となりました。本件契約においては、Airbourneがマーケティング費用としてUSD 1 millionを支出せず、最初の12ヶ月でnet salesがUSD 5 millionに達しなかった場合には、Airbourneは本件資産を戻せるという条項が設けられていました。本件契約の締結後まもなく、Airbourneの経営状態が悪化し、Airbourneは上記マーケティング費用を支出せず、本件資産を返却することで経営を正常化しようとしたのですが、Squid Soapは返却に応じなかったので訴訟に持ち込まれました。

裁判所は、本件契約中にAirbourneのmarketing programの遂行に関する表明保証条項等の文言がないことを主な理由として、Squid Soapの主張には理由がない、従って、本件契約の条項に従って、本件資産の返却に応じなければ行けない旨判示しました。

判断の帰結は妥当なものであると私も思いますが、Earn-Out Provisionは、そもそもが将来起こることについての規定なので、規定の仕方に慎重を要するということが本事案の教訓かと思います。本件を例にとると、売主としては、締結時の買主の経営状態についての表明保証、及び将来どのような方法でmarketingを行うか等の詳細なcovenants規定を設けて、買主の義務を明確化する必要があったのではないかと思います。
また、下記参考文献によると、買主側にとっても、non reliance provisions(契約書に規定されていること以外には依拠できないこと)を入れていれば、上記のような紛争は生じなかったであろう旨述べられています。

参考文献:Michael Kendall  “Delaware Case Highlights Common Pitfalls to Avoid With Earn-Out Provisions

4.29.2010

Bankruptcy Sale (363 sale)

今年に入って表題のBankruptcy Sale に関するdealを目にする数が減ってきましたが、景気の動向に関わらず、倒産した会社から資産を譲り受ける場合はあると思います。そこで、Chapter 11下の会社(以下「債務者」、a debtor-in-possessionの意)から、連邦破産法363条に基づいて、資産を譲り受ける場合の手続きと効果について、概観します。

I. 手続き

1.初回入札

まず、購入予定者は、債務者との間で資産譲渡契約(Asset Purchase Agreement)を締結します。この契約は後述のように破産裁判所の許可が必要ですが、もし、破産裁判所の許可が得られない場合には、どちらかの当事者がこの契約を終了させることができる様に構成するのが通常です。この購入予定者は、当該資産の底値を示すことから「おとり入札者(stalking horse bidder)」とも呼ばれます。

なお、この購入予定者は最初の入札の際に必要な時間と費用をかけていることから、この点を保護するため、購入予定者は、その後の競売手続において、より高額を提示する応札者がいた場合のための契約保護条項(通常、費用の償還や購入価格の3%の違約金)を設定するのが通常です。

2.売却通知/競売手続

債務者は、全債権者に売却を承認してもらうため、20日間の意見聴取期間を設けます。その後、債権者からかかる売却に関し異議がでた場合(又は異議がでない場合であっても)、破産裁判所は、競売手続を踏むことを求めることがあります。より高い、より良い提示がなされる可能性がある場合にはかかる手続きを踏むことが多いと思われます。

3.売却審査手続

競売手続を終えた後、破産裁判所は落札者の入札条件及びそれに付随する譲渡契約を勘案し、落札者への売却を許可するかについて審査を行います。同時にかかる売却に関し、異議があった場合の異議の内容についても審査します。その後売却許可が出された場合には、かかる許可は、裁判所が別途指示しない限り、10日間その効力が維持されます。

4.クロージング

このような売却手続は、多くの場合、裁判所からの売却許可が下りたら直ちにクロージングが行われますが、裁判所が効力発生までに最大10日間の期間を設定した場合には、当該期間が経過したときに、クロージングが行われることになります。

II. 効果

債務者は、当該資産を担保権、更生債権、その他負担が除去された状態で売却することができます。

III. その他留意点

上記手続きを経ずとも、通常の業務過程においては、債務者は、裁判所の許可なく資産を売却することができます。通常の業務過程には、通常業務において生じる在庫の売却などが含まれます。

3.28.2010

Compliance Programs

引き続き同じ雑誌の下記の記事について。

記事は(こちらはログインしなければ原典にはあたれないようです。)、独禁法に焦点を当てていますが、一般的なCompliance Programにも該当する部分についてご紹介したいと思います(US Sentencing Guidelines参照)。

I. Setting Up Standards and Procedures
Compliance manualの作成。通常業務に従事している従業員が短時間で読んで理解できるようできるだけ短く簡潔に分かり易く書くことが望ましい。

II. Assignments of Responsibility
取締役会の監督(Programの内容運用についてレポートを受け取り、適切な改善策を講じる)、Compliance Officer(又はTeam)の選任。
但しかかる選任に当たり、違法行為、Compliance Programに抵触する行為を犯した者ではないことの調査を行うこと。

IV. Communication of Standards and Procedures
Compliance Manualの配布だけでなく、研修を継続的に行い、対象者の理解を深める努力を行うこと。特に、どのような場面(行為)に遭遇した場合に、どのようなタイミングで報告を行うかは重要な点。

V. Certain Measures to Ensure Compliance
Compliance Officer (Team)による監督、定期的なManualの評価、さらにはHotline(通報制度)の確立、適切な運用。

VI. Consistent Enforcement
これは、どの従業員に対しても平等に運用し、一定の対応をすること。

VII. Follow-up on Detected Offences
適切、迅速な懲罰手続きの履践、内部調査の履行、それに伴う関連文書の保存(これは前回同様e-Discoveryのlegal hold noticeや関連監督機関(独禁法の場合のDOJ等)に対する報告等の関連で重要です。)。

3.16.2010

Initial Public Offerings 101


アメリカでIPO (Initial Public Offerings)の留意点

IPOプロセスの全てをここに記載する事は不可能ですが、実務上主な点、留意点、日本のプラクティスとの違い(私が知っている範囲でですが。)を中心に書き留めます。

1.準備期間:ケースバイケースではあるものの、特に途中で作業停止期間(実際はマーケットの状況に応じてストップする事もよくある。)や通常の作業以外の作業がなければ、準備を初めてからPricingまで、4〜6ヶ月
特に、日本との大きな違いは、SEC(日本の財務局)が行うレビューが詳細であるという事です。1ヶ月のレビュー期間の後、多いときには200以上のコメントがあり、それに全て対応する必要があります(変更しないとしても、何故変更しないのかの理由を明示する事も含む。)。最初の届出書提出から多いときには、5,6回変更届出書を提出することになります。

2.発行体(Issuer)がなすべきこと
(1) Board Resolution
(2) Registration Statement (有価証券届出書に相当)のドラフト
(3) D&O Insuranceへの加入又は変更
(4) SOX法への対応
(5) Financial StatementのAuditを依頼
(6) (必要に応じて)株式のリストラクチャリング(如何にValuationをするかにより、株式分割(stock split)、株式併合(reverse stock split)を行う)
(7) Registration Rightsがある場合の対応(通知を出したり、それにより参加を表明する株主への対応)
(8) Due Diligence (Back up materialsの整理(日本では、外国発行体ものに携わる事が多かったので、日本の内国会社のIPOもそうなのかもしれませんが、全ての届出書の記述に、証拠(Back up materials)を用意するのはかなりの作業量となります。)、Website等PR資料の精査(Gun Jumpingに抵触する記載の削除、変更等))
(9) (必要に応じて)Preferred Sharesがある場合のCommon Stockへの変更
(10)  (必要に応じて)株主総会決議事項の総会決議(上場後にするよりも簡潔に済むという意味合い。)
(11) 取引所(NYSE/NASDAQ等)への連絡、取引所で用いるsymbolの予約
(12) Transfer Agent(名義書換代理人)の選定

3.引受会社(Underwriters)がなすべきこと
(1) Underwriting Agreement(10b-5対策, negative assurance)のドラフト,交渉
(2) Officers, Large ShareholdersとのLock Up Agreements(通常は180 days)のドラフト、交渉
(3) FINRA filing(引受契約の公平、公正を担保するために提出する書類)

4.会計事務所(Auditor)がなすべきこと
(1) Regulation SXに基づくFinancial Statementの準備
(2) UWに宛てたComfort Letterの作成

In re Dow Chemical Company Derivative Litigation



Derivative Lawsuitに際して行うDemandが必要である(futileではない)と判断したDelaware Chancery Courtの事案。(C.A. No. 4349-CC, 2010 WL 66769 、Del. Ch. Jan. 11, 2010)
既に、各Law Firmにおいてメモランダムが出ていると思いますので、詳細はそちらに譲ります(かかるメモをご覧になりたい方は、お手数ですが私までご連絡下さい。)が、本件は、Dow Chemical Company ("Dow")が、Rohm & Haas("R&H")と2008年にMerger Agreementを締結したところ、その後の経済状況のためDowに損失が発生し、それに対して、Dowの株主がDowのDirectors, Officersに対して、Derivative lawsuit(代表訴訟)を提起した事案です。

基本的に、株主がDerivative Lawsuitを提起する場合には、Directorsに対してあるClaimを実行するようDemandを行うのが通常ですが、かかるDemandがfutile(無駄な)であると株主が判断した場合には、Demandを行わずに直接Derivative Lawsuitを提起する事が出来ます。

本件も株主がDemandを行わずにDerivative Lawsuitを提起し(多くの場合がそう)、Demandがfutileであるかが争われた事案です。この論点の判断には、従前通りAronson testが使われ、(i) a majority of the directors who approved the transaction in question were disinterested and independent,という点も 、(ii) the transaction was the product of the board's good-faith, informed business judgmentという点も、
Plaintiffの立証が不十分であるとの結論をみました。

留意点としては、(i)の点については、outside business relationship or personal relationshipsはindependenceの欠如の主張としては不十分であること、(ii)の点については、regardless of whether it is an isolated transaction or part of a larger transformative strategyと述べ、"bet the company"のような大きなディールであっても判断基準に差異はない事を明確にした点です。

また、(ii)の点について、最近の re Citigroup, Inc. Shareholders Litigation, 964 A.2d 106 (Del. Ch. 2009)において、 the court held that such "substantive second-guessing of the merits of a business decision...is precisely the kind of inquiry that the business judgment rule prohibits."と述べている点も影響しているものと今回の判断に影響しているものと思われます。

Increase Antitrust Enforcement and Litigation

最近(といっても昨年末)のAntitrust Enforcementに関する所内のセミナーの概要です。

I. 企業のフロントオフィスの方に是非守っていただきたいこと。
・競合他社と、"値段"に関しては絶対に話し合ってはいけない。
・競合他社と、値段以外のことに関して話し合うときも、法務部や弁護士に相談すること。
・顧客、販売店、サプライヤーとの取引を終了させ、また、取引を拒否するときは、法務部や弁護士に相談すること。
・Document retention and destruction policies (文書管理規程)を十分理解し、遵守すること。

II. 最近の刑事犯摘発動向
ここ数年で罰金の額が急増している点に留意する必要があります。また、米国では、当然のように個人も勾留され、実刑判決を下される点にも留意する必要があると思います。

III. Merger Enforcment
FTC(アメリカの公正取引委員会)は、Merger dealが成立した後、1〜3年を経過した後にでも、当該dealの当否について調査を開始したり、場合によっては当該dealの無効を裁判所に訴えることがあります。最近かかる件数が増加傾向にあることに留意が必要です。これらのケースは、HSRの届出(事前の届出)をしており、それに対してWaiting Period中には特にFTCがActionを起こしていない場合にもおこっています。従って、各ディールの際に、かかる事態を想定した契約条項を盛り込む必要があります。

IV. 気をつけるべき産業
また、昨年就任したAAG Varney(Antitrustを所轄する官庁のトップ)は、Agriculture, Telecom, Newspapers, Financial Industries, Health Care, and Technologyを、今後注視する分野であると発言している点にも留意する必要があります。

V. 最近のSupreme Courtの判決
Texaco Inc. v. Dagher (2006) - Joint Ventureの参加者間の価格設定が、"agreement among competitors"には当たらないとされた事例。

Illinois Tool Works Inc. v. Independent Ink, Inc. (2006) - 特許があるからという事情のみをもって、market powerがあるとはみなされないこと、Tying Arrangementsが、Rule of Reasonによって考慮される事を判示した事例。

Bell Atlantic Corp. v. Twombly(2007) - Antitrust consipiracyの主張は、plausible(Injury, Market definitionの双方に関して。いい訳が思い浮かびませんが、「信憑性のある」)でなければならないと判示した事例。Plausibleであるといえるためには、consipiracyを推認させる事実の摘示を行うことを原告に要求しています。これにより、訴訟の初期段階で事実の整理ができ、企業側の大規模なDiscoveryの負担がかなり軽減されたようです。

Leegin Creative Leather Products v. PSKS, Inc. (2007) - Resale Price MaintenanceがRule of Reasonによって考慮される事を判示した事例。ただし、州によっては、まだPer se illegalの枠組みで判断されることに注意が必要です。

V. Per se illegal v. Rule of Reasonに関するまとめ。

A. Per se illegal for Competitorsと判断される類型が、
・Price Fixing
・Bid Rigging
・Customer Allocation
・Market/Territory Allocation
・Agreed Limitations on Output/Production
・Group Boycotts

B. Rule of Reasonの中で判断される類型が、
・Exclusive Territories or Customers
・Exclusivity Dealing Arrangements
・Tying, Loyalty Discounts or Bundling Arrangements
・Resale Price Maintenance
・Refusals to Deal / Dealer Termination

と分別されます。

VI. American Needle case
さらに、American Needleに関する解説もありました。これは、NFLのライセンシングに関わる事例で、耳目を集める事件なのですが、あまり自分のプラクティスや日系企業の法務とは関係がないので(NFLの団体の法的性質が論点になっていたりして)、割愛させていただきます。