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1.09.2011

Doing Business in the United States

皆様、明けましておめでとうございます。
今年1回目の投稿が、お正月から10日が過ぎようとしている時点で、今年の更新頻度の低さを予想しているかのようですが、今年も、「可能な範囲で」、アメリカの法律問題や文化等を紹介していければと思っています。

さて、今年1回目が簡単な投稿で恐縮ですが、Squire Sanders法律事務所のメモを見つけましたので、紹介します(私が所属している事務所とは無関係です。)。
既に、このブログでも触れた論点も多いですが(Business EntitiesやEmployment Issuesなど。)、日本企業が、米国に進出するにあたり検討するべき論点を抽出できるという点では有用なメモかと思います。もちろんここに掲げられているのが全てではない場合がほとんどだと思います。

10.31.2010

Employment Risk Management

先日、Japan Business Association of Southern Californiaという経済団体が主催するセミナー(講師:Lisa Kitagawa先生、望月良子先生)が開かれましたので、聴講してきました。

私が気になった点が中心となりますが、簡単に紹介したいと思います。

1. Job Application
  • 年齢の欄は設けない。アメリカでは、年齢に基づく差別は下記の通り違法です。
  • At willであることを明確にする。
  • Reference Check Releaseを設ける。これは、前のEmployerに申込者の前職での職務状況について聞いても良いことを同意する旨の文言です。これにより、実際に面接をする前にも、前のEmployerに話を聞くことができ、スクリーニングをかけられます。
  • 種々の申込資格への制限についても、Bona Fide Occupational Qualificationであれば許される(例えば、女性洋服のモデルの応募資格を女性に限る場合等)。
2.Interview
  • 質問は職務に関与する範囲で行うことを念頭に置く。個人的に日本でのリクルート活動を経験したわけではないので、日本での面接の実態について精通しているわけではありませんが、一般的な日本での面接と比較しても、かなり厳格に考えた方が良いと思います。
  • US Federal Equal Employment Opportunity Lawsにおいては、下記の項目に基づく差別を禁じています。詳細はこちら
    • Age
    • Race
    • Color
    • Gender
    • National Origin
    • Genetic Information
    • Religion
    • Disability
  • 日本の憲法14条列記事項と似ていますが、異なるところとしては年齢の項目がある点です。障害についても、憲法14条には列記されていませんが、障害者基本法がカバーしていると理解しています。
  • さらに、Californiaでは、下記の項目に基づく差別を禁じています。詳細はこちら
    • Medical Condition
    • Marital Status
    • Sexual Orientation(性的指向)
    • Pregnancy, childbirth
  • 例えば、Marital Statusについては、勤務時間帯を示してこの時間に働くことに支障はあるか、とか、出張勤務をするのに問題があるか、という聞き方をすることになります。
3.Job Description
  • これも日本においては、馴染みの薄いものかもしれませんが、Job Descriptionにおいて職務内容を明確にする必要があります。
  • また、ここで、雇用者と従業員との間で、当該従業員がexemptなのか、non-exemptなのかを明確にしてお互い了解を得ておくというプロセスが重要。なお、exempt employeesに分類されますと、雇用者は従業員にOvertime payを支払う義務がなくなります。どのような場合がexemptなのかについては、ケースバイケースの判断になることが多く、故に、よく訴訟の原因になる点でもあります。公的なものではありませんが、こちらが参考になります。
  • 職務内容の項目の最後に、catch all条項をつけておくことをお勧めするとのことです。
4.Posters
  • どのような項目、内容について職場に貼り出しておかなければいけないかについては、Federalについては、こちらを参照。Californiaについては、こちらを参照。
5.Employee Handbook
  • 日本法上の就業規則に相当するものですが、就業規則よりもより詳細に、ページ数も多いことが一般的です。
  • ここでも、At willであることを強調することが重要です。
  • さらに、Electronic Communicationの取り扱い、Internal Complaint Proceduresについても、留意して作成する必要があります。
6.Arbitration Agreement (仲裁契約)
  • 雇用者と従業員との間で何らかの紛争、問題が生じた場合には、訴訟ではなく、仲裁によって解決する旨を予め定めておくものです。
  • 通常は、Employee Handbook、同Handbookの受領通知(Acknowledgement and Agreement)の両方に記載があります。
  • そもそも、この仲裁同意条項を設けるかどうかも検討する必要があります。米国企業においては、仲裁手続きによると控訴できない(一回の判断で決まってしまう)ことから、仲裁同意条項を設けないという判断をすることもあります。
  • しかし、個人的には、日本企業は同条項を設けたほうがいいのではないかと思っています。米国の訴訟制度には、Discovery手続きがあり、かかる手続きに日ごろから備えている日本企業は少ないように思います。また、陪審制も日本企業にはなじみのない制度ですし、Juryがどのような判断を下すかの予測可能性が少ないとも言われます。
  • ただし、仲裁手続きにおいても、手続きをどう進めるかは、当事者間の合意又は採用された仲裁廷のルールによりますので、Discoveryの手続きが存在する場合もあります。従って、仲裁同意条項にどのルールを採用するべきかについては、慎重な検討が必要だと思われます。
  • また、同条項を設ける際に、Consideration (対価)を提供する必要がある場合があります。締結後変更する場合等には、2週間程度の賃金や追加休暇(PTO)をConsiderationとして提供することを勧められていました。
7.離職時の手続き
  • 従業員は、At willのステータスであるのが通常ですので、いつ従業員との契約を終了させてもよいことになります。ただ、差別に基づく解雇は違法ですので、他の従業員と比して、公平な観点から契約を終了させることが重要になります。
  • レイオフ等離職時に2週間分等の追加給与を与える例がありますが、これは義務ではありません。
  • レイオフや解雇等の場合には、その後当該従業員が不正を働かないか注意をする場合もあります。
  • Separation & Release Agreementは、従業員に離職手当を与えることを対価として、会社に対して一切の訴えを提起しないことを約する契約です。もし、従業員が40歳以上の場合には、本書面の締結に際して21日以上の考慮期間を与える必要があり、もし、40歳以上の従業員が2名以上離職する場合には、45日以上の考慮期間を与える必要があるとのことです。また、法定記載事項もあるので留意する必要があります。
8.その他
FLSA(Fair Labor Standards Act)に関する説明をしたDOLのサイトです。ご参考まで。

5.23.2010

Classifying Individuals as Independent Contractors instead of Employees

業務従事者が実際にはEmployeeであるにも関わらず、Independent Contractor (業務請負人、IC)として扱われている場合の問題(日本でいう偽装請負)に関して、所内で行われたセミナーの概要についての投稿です。

1.運用の厳格化、最近の状況
2.運用上の差異、ICとして扱ってしまった場合のリスク
3.ICとEmployeeの区分基準
4.ICと契約するにあたって留意するべき点

1.運用の厳格化や最近の状況
NY Timesの記事やLos Angeles Daily Journalの記事(これは有料の記事のようです)等によると、オバマ政権は,今後10年で行政指導(IRSの調査等)や罰金の徴収等で$7 billionの税収増を見込んでいるとのことです。Government Accountability Office (GAO)のレポートによると、従業員としての実態がありながらICとして扱われているというケースは、最低でも150,000件はあると推測されていますし、IRSでも、かかる問題により1984年の時点で$1.6 billionの税収のロスがあると推測しているそうです。
現在、Fair Labor Standards Act (FLSA)に関しては、記録義務の厳格化や罰金の上限額の引き上げについての改正について議論がされています。各州でも同様の動向があるようです。

さらに、カリフォルニアにおいては数年前から、meal period/rest periodの規制違反に関して大規模なクラスアクションが多数提起されていましたが、現状は雇用者側に有利な状況にあるようで、雇用者側に有利な判決がでれば、原告側の代理人は新たな争点を探すことになり、この偽装請負に関する点は次の争点として浮上するかもしれません。

上記のような点から、この論点は現在注目を浴びつつある論点ということが出来ます。

2.運用上の差異、ICとして扱ってしまった場合のリスク
業務従事者がICであれば、
  • 雇用者はSocial Security TaxやMedicare Taxの負担を免れる。
  • Income tax withholding (state and federal)の義務を免れる。
  • Workers Compensation (労災補償)やUnemployment Insurance(失業保険)の保険加入を免れる。
  • Training等に費やす時間に対して、対価を支払わなくてよい。
  • 経費を支出した場合に当該額を償還しなくてよい。
  • Anti-discrimination laws, minimum wage and overtime laws, tortsなど、法的リスクが少ない。
  • プロジェクト毎に支払われる形態の契約であれば、コスト管理がしやすい。
  • 期間の面でも、柔軟性を保てる。
このような差異から、雇用者としてはできるだけICとして契約をしたいというインセンティブがあります。
しかし、書面上ICとして契約したとしても、実態はemployeeと認められる場合には、下記のようなリスクを負うことになります。
  • Workers Comp.やUnemployment Insuranceに加入していなかったことによる、所轄機関からのペナルティ(罰金等)
  • 実際に労災の請求が訴訟に発展した場合、Legal Costについて保険でカバーされなくなる。
  • 過去支払うべきだったUnemployment Insuranceの保険料の支払。
  • 従業員からの訴訟の提起(ICとして扱われたことによりbenefitが受けられなかった。)とそれに対する従業員への損害賠償
3.ICとEmployeeとの区分基準
かかる基準は、どのようなコンテクストで問題になるかにより異なります。また、基準がある場合でも、各事案によりどのような事実が存在するかが重要になってきます。

A. カリフォルニア
Labor Code 3357により、Employer/Employeeの関係があることが推定されます。従って、雇用者が反証しない限り、Employeeと認められてしまうことになります。反証する要素としては、Labor Code 2750.5に規定があり、
(a) That the individual has the right to control and discretion as to the manner of performance of the contract for services in that the result of the work and not the means by which it is accomplished is the primary factor bargained for.
(b) That the individual is customarily engaged in an independently established business.
(c) That the individual's independent contractor status is bona fide and not a subterfuge to avoid employee status. A bona fide independent contractor status is further evidenced by the presence of cumulative factors such as substantial investment other than personal services in the business, holding out to be in business for oneself, bargaining for a contract to complete a specific project for compensation by project rather than by time, control over the time and place the work is performed, supplying the tools or instrumentalities used in the work other than tools and instrumentalities normally and customarily provided by employees, hiring employees, performing work that is not ordinarily in the course of the principal's work, performing work that requires a particular skill, holding a license pursuant to the Business and Professions Code, the intent by the parties that the work relationship is of an independent contractor status, or that the relationship is not severable or terminable at will by the principal but gives rise to an action for breach of contract.(太字は筆者)
等の要素により総合的に決定されます。

B. Economic Reality Test
Federal Lawが問題となる場合には、Economic Reality Testが適用されます。
(a) the degree of control exercised by the alleged employer; 
(b)  the extent of the relative investments of the [alleged] employee and employer;  
(c) the degree to which the "employee's" opportunity for profit and loss is determined by the "employer"; 
(d) the skill and initiative required in performing the job; and  
(e) the permanency of the relationship.

C. IRS
さらに、IRSは、下記のようなテストを適用します。
Facts that provide evidence of the degree of control and independence fall into three categories:  
(a) Behavioral: Does the company control or have the right to control what the worker does and how the worker does his or her job? 
(b) Financial: Are the business aspects of the worker’s job controlled by the payer? (these include things like how worker is paid, whether expenses are reimbursed, who provides tools/supplies, etc.)  
(c) Type of Relationship: Are there written contracts or employee type benefits (i.e. pension plan, insurance, vacation pay, etc.)? Will the relationship continue and is the work performed a key aspect of the business? 
上記テストには、Reasonable BasisというSafe Harbor Defenseがあります。

D.その他、Unemployment and Workers' Comp. Testというテストもあります。

4.ICと契約するにあたって留意するべき点
以上の区分基準から、ある業務に関して、作業従事者をICとして契約する場合に留意するべき点としては、下記のような要素があげられます。
  • ICであることを明記する。
  • ICを支配下に置いていると認められる規定は避ける。
  • 指示を出すのではなく、出来る限り"Recommend"するに留める。
  • 作業や成果物に対して対価を支払い、労働時間に対して対価を支払わない。
  • 作業に従事する作業員に関する責任(各種保険、税金等)は、ICが負う。
  • Employee Benefitを放棄する旨の規定(万が一、Employee Relationshipが認められた場合)
  • 期間は、プロジェクト毎または一定期間("at will"とはしない。)
  • 作業に必要な道具、設備、費用はICが負担する。
と言った点に留意し、また、契約に規定するだけでなく、契約の規定に従って運用をすること(場合によっては、適切な運用がなされているかの監査も行う)が肝要です。

4.18.2010

Data Security and Privacy Issues in Labor and Employment

アメリカにおいて、従業員を雇用している企業であればほぼ全ての企業が、dataやprivacyのsecurityに関して対策を講じる必要があります。
Data Security and Privacy lawsに関して、日本では個人情報保護法があり、EUでも個人情報保護に関して強い規制(directive)があると聞いていますが、アメリカでは上記のような網羅的な法律はありません。実際にEUの規制上、EUの個人情報をアメリカに移すのは難しいという話も聞いたことがあります。また、日本での個人情報の保護意識の高まりはご存知のことと思います(個人的には少し行き過ぎのような気がしますが。)。

上記のような背景事情から、アメリカでのData Security and Privacy Issuesの規制は緩いものと思いがちかもしれませんが、特にここ数年、アメリカでもdataやpersonal informationのsecurityに関心が集まって来ており、留意する必要があります。

なお、セミナーでは雇用関係の側面から、本件問題を取り上げていましたので、この投稿でもかかる観点からの報告になります。

I. 制定法の概観

アメリカでは、Health Care Providers等を対象としたThe Health Insurance Portability and Accountability Act of 1996 (HIPAA)や金融機関を対象としたGramm-Leach-Bliley Act of 1999 (GLBA)など、特定の業種に対して制定されている法律があるので、これらの法律の対象となる業種の企業は、それぞれの法律に従う必要があります。

上記以外の業種の企業であっても、従業員を雇用している企業であればほぼ全ての企業が、dataやprivacyのsecurityに関して対策を講じる必要があると思います。 

なぜなら、アメリカの45州では、情報の漏洩があった場合にはかかる事実を開示する義務を企業に課しており(例えば、カリフォルニア州では、CAL. CIV. CODE § 1798.82)、かかる義務に基づき開示を行った企業に対して訴訟が提起される例が急増しているからです。

また、この開示を端緒として、Federal Trade Commission(FTC)のInvestigation(捜査)が行われることもあります(See Section 5 of FTC Act)

II. 訴訟の原因

漏洩の原因の中で20%以上を占めるのが従業員によるものだということです(さらにそのうち3分の2は従業員の故意によるもの)。

そして、上記で触れた訴訟において問われるのは、

• 情報を漏洩した従業員を雇用した責任(negligent hiring and retention)

• 情報安全保管義務違反、

• その他FCRA, FCFAA違反等法定の義務違反

• 漏洩した事実の開示による株価下落の損害賠償請求又は derivative cases(代表訴訟)

さらに、まだ実際に原告に損害が発生していない段階でも、漏洩が今後起こらないように監視を求めることを要求する場合もあり、その場合にかかるコストは事前に行う場合に比して、高額になる場合もあるようです。

III. 対策

上記のようなリスクを出来る限り回避するために、以下のような対策が考えられます。

• どの情報がSensitive Dataなのかを知り、かかるDataの所在(どこからどこに情報が流れて行くかということも含みます。)を把握する。

• 誰にアクセス権限があるのかを決定し、さらにその権限者の使用目的も限定する。

• さらに、詳細な管理の方法をマニュアルの形にする(また、そのマニュアルを効率的に運用させる。)。

• 情報を社外に出す場合の制限をかける。

• 情報を処分する際のルール(FACTA and the FTC disposal rule参照)を策定する。

• 従業員への研修(特に、漏洩が起きてしまったときの対応)を定期的に行い、理解を徹底させる。

• また、最近では、Cyber risk, privacy riskに特化した保険があるので、かかる保険に加入する。

特に、雇用関係では、

• 採用時のBackground Checkを行う際(各州法によって、要件が異なりますが、希望者の明確な同意を得ておく事が望ましい。)、

• 従業員との雇用関係が終了する際、

には慎重にSensitive Informationを取り扱う必要があります。

3.16.2010

Social Media in Employment



所属するローファームで行われた表題のセミナーの概要です。

背景:アメリカでは、55%の従業員がソーシャル・ネットワーキング・サイト(Facebook, Twitter等)に週一度以上はアクセスしており、そのうち15%は勤務時間中に見たことがあるとのこと。

対策:
1.何が許され、許されないかの雇用者の明確なルールが必要(例:PC等設備が雇用者にあること、当該設備の私的利用に対してプライバシー権を主張することができないこと、雇用者がかかる利用を監視する権利があること、差別的発言、ハラスメントの禁止等)。
2.服務規律等がソーシャル・ネットワーキング・サイトへのアクセスという場面でもあてはまること(例:児童ポルノ所持・閲覧、特許・著作権で保護される情報・営業秘密の漏洩、名誉毀損、職務怠慢)。
3.これらのことについて、従業員からの同意を得ておくこと(黙示の同意が認められる場面もありますが、書面で得られるのであれば、得ておいたほうが良いのは言うまでもありません。)。
4.これらのことについて、従業員に対する研修等で理解を徹底させること(違反例の共有をしたり、一方的に押し付けるのではなく、雇用者にとっての必要性があること(下記5.参照)を強調することが効果的かと思われます。)。
5.雇用者の義務があることの理解(他の従業員等から、監視を怠っているとして訴えられる可能性もあります。Doe v. XYZ Corp., 887 A.2d 1156 (NJ Super. 2005)参照。)。
6.監視は、雇用者のビジネス、他の従業員に関係するもののみに限定されること。
7.その他関連する法律(Federal Electronic Communications Privacy Act, (Exceptions: Provider Exception Prior Consent, Business Use Exception, Inadvertent Interception)、National Labor Relations Act (policy bargain))への理解。
8.サイトの削除が必要な場合には、当該サイトの"terms of use"規定に従うこと。
9.必要に応じて、関連官庁への報告を行うこと。