5.06.2010

Earn-Out Provisions

本稿では、昨年末のケースを取り上げ、Earn-Out Provisionsを契約書中に規定する際に留意するべき点をお伝えしたいと思います。

Earn-Out Provisionsとは、M&A取引等の際に、クロージング時に一括して買収価格を支払って取引が完了するのではなく、将来の業績に応じて契約内容を調整することを約する規定です。よくある例としては、クロージング時に○ドル支払い、その後○年間にわたり、将来の業績に応じて○○の利益の○%を支払うというような内容がこれに該当します。

Airbourne Health, Inc. and Weil, Gotshal & Manges LLP v. Squid Soap, LP (November 23, 2009)においては、Airbourne(買主)がSquid Soap(売主)が開発したproductsに関する資産(「本件資産」)を購入する際の資産譲渡契約(Asset Purchase Agreement、「本件契約」) 中のEarn-Out Provisionが問題となりました。本件契約においては、Airbourneがマーケティング費用としてUSD 1 millionを支出せず、最初の12ヶ月でnet salesがUSD 5 millionに達しなかった場合には、Airbourneは本件資産を戻せるという条項が設けられていました。本件契約の締結後まもなく、Airbourneの経営状態が悪化し、Airbourneは上記マーケティング費用を支出せず、本件資産を返却することで経営を正常化しようとしたのですが、Squid Soapは返却に応じなかったので訴訟に持ち込まれました。

裁判所は、本件契約中にAirbourneのmarketing programの遂行に関する表明保証条項等の文言がないことを主な理由として、Squid Soapの主張には理由がない、従って、本件契約の条項に従って、本件資産の返却に応じなければ行けない旨判示しました。

判断の帰結は妥当なものであると私も思いますが、Earn-Out Provisionは、そもそもが将来起こることについての規定なので、規定の仕方に慎重を要するということが本事案の教訓かと思います。本件を例にとると、売主としては、締結時の買主の経営状態についての表明保証、及び将来どのような方法でmarketingを行うか等の詳細なcovenants規定を設けて、買主の義務を明確化する必要があったのではないかと思います。
また、下記参考文献によると、買主側にとっても、non reliance provisions(契約書に規定されていること以外には依拠できないこと)を入れていれば、上記のような紛争は生じなかったであろう旨述べられています。

参考文献:Michael Kendall  “Delaware Case Highlights Common Pitfalls to Avoid With Earn-Out Provisions

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