11.25.2010

Tips for taking California Bar Exam: Part I


ニューヨーク州の司法試験の結果発表から遅れること2週間、先週末に漸く、2010年夏のカリフォルニアバー(カリフォルニア州の司法試験)の発表がありました(妻は無事合格していました!)。
そろそろ、来年に向けて情報収集を開始する方もおられるかと思い、私のカルバー(Cal Bar) 受験体験記を、その後追加して入手した情報と共に、何回かに分けて提供したいと思います。なお、NY Barの情報は、基本的には私が受験した2007年の際に収集した情報を元にしているので、現在とは異なることがあるかもしれません。ご了承下さい。

まず、初回は、NYバーとの違いについて。
よくNY Barに比べると、CA Barの方が難しいと言われます。
確かに、外国人のFirst time takersの合格率だけをみると、NYでは大体50%くらいなのに対して、CAでは2割程度です。
ただ、受験者数が圧倒的に違いますし、下記の通り、日本で実務経験のある弁護士にとっては、どちらが簡単かというのは一概には言えないように思います。

1.MBE (択一)
テスト自体は、50州共通のテストなので、一緒のものです。
大雑把ですが、NYではScaleで130点台、Rawで110点台後半を取る人が合格者の9割と言われているのに対して、CAでは各々140点台、120点台が要求されているようです。
この10点差がどのくらい重いかということですが、感覚的には、日本の択一で合格点が2~3点違うというイメージでしょうか。
ちなみに、今年の受験者の全国平均は143点らしいです。


2.Essay
 CAは全部で6問を各1時間で解くのに対して、NYは4問を各45分で解くので、CAの方がたくさん書く必要があります。
そのため、試験期間がCAは3日間あります(NYは2日間)。
勉強する範囲は、科目数はCAが(数え方にもよりますが)14に対して、NYは20数科目ありますが、NYでは細かい科目(例えば、レジュメ1枚で終わるような科目)や殆ど出題可能性がない科目もあるらしく、特定の科目を重点的に勉強することになるそうです(例えば、憲法はEssayではほぼ出題されないらしい。)。
これに対して、CAは満遍なく14科目が出題され、しかもたまにすごくマイナーな論点が出たりします(しかも、日本の司法試験と違って、絶対評価なので、マイナー論点でも一通りのことを書く必要があります。)。
CAとNYとの一番の違いはこの点だと思います。
時間はCAの方が長いですが、45分の間に1通仕上げないといけない方が大変ということも出来るかもしれません。実際に、本試験では1時間でも、時間内に仕上げるのは相当辛いです(書かなければいけないことが多いという意味で。)。なので、その点は余りデメリットだとは考えませんでした。
なお、Essayの試験範囲は、2007年の夏から増えていて(主にコモンローしか聞かれなかった科目がCAの State lawについても聞かれるようになりました。)、私が受験した年には幸い聞かれなかったものの、その後は、結構聞かれているようなので、注意が必要です。


3.PT (Performance Test)
CAは、CA独自の試験で2問を各3時間で解くのに対して、NYでは1問を90分で解きます。
これは、 日本の司法研修所の起案に少し似ていて、FactsとRulesが与えられて、問題に適切なRuleをピックアップして、それに与えられたFactsを当てはめていくというもので、実務を経験している者にとっては入っていきやすい試験形態だといえます。最初演習問題をやったときは、難しいと感じましたが、段々慣れていき、実際、私もPTだけは出来たという自信がありました。
CAはPTの比重が重いので(26%、NYは10%くらい)、この点はメリットといえると思います。


4.その他
他にも、カリフォルニアに居住している方であれば、AlbanyやBaffalo(NY州の郊外)まで移動しなくていい、時差調整をしなくてもいい(カリフォルニアにいながらNYを受けるには、時差を考慮して、毎日朝4時くらいに起きて体を慣らしておく必要があるそうです。)、パソコン受験が保証されている(NYは抽選)、というメリットもあります。(ちなみに僕はハンドライトでしたが。)
なお、CAの受験料は高い!(私も受験を決めてから気づいたのですが。。。) です。NYは250ドルでいいのに対して(但し、2011年からはかなり高額になるそうですね。)、CAだと1400ドル位します(登録料160ドル、受験料700ドル、モラル認定料400ドル、その他PC受験料100ドル等諸費用)ので、ご注意を。

11.24.2010

FCPA: Strong and Getting Stronger

表題のWSJの記事のご紹介。

ここ2年の罰金の総額が$2 billionというのは驚きです。
あと、半分以上のケースが、非米国企業又は非米国企業の子会社という点にも留意が必要ですね。

最近投稿が少ないので、取り急ぎ簡単に。

11.03.2010

Developing A Discovery Plan

日本とアメリカの訴訟の仕組みにおいて、最も大きな違いの一つと言ってもいいのが、このDiscoveryの手続きです。

既に本ブログでもe Discovery等については触れていますが、本稿ではDiscovery全体の手続きについて概観したいと思います。

なお、Discoveryの定義ですが、民事手続においては、Trialの前にその準備のために、当事者が互いに、事件に関する情報を開示し収集する手続であり、争点を明確にさせる情報など広く訴訟物に関連性のあるいかなる事項を含むので、「証拠開示」という訳語は狭すぎるとされ、「開示手続」と訳すのが適切であるとの記載があります(田中英夫「英米法辞典」)。

Federal Courts v. State Courts
当然のことながら、手続きの根拠となる法令が異なります。ただ、一般的にFederalの方がよりformalで、かつ、federal judgesがそれぞれのmodel formを持っていることが多いです。
以下の説明は、主にFederalの手続きを対象とします。

Early Conferences
原告が訴状を提出した後、当事者間でEarly Conferenceを行います(FRCP 26(f))。この時に以下の事項を検討します。
  • 当事者間の請求、抗弁の内容,根拠
  • 和解等早期に訴訟を終結できるかの可能性
  • Rule 26(a)(1)(後述)に基づくDiscoveryのアレンジ
  • Discoveryの対象となる情報の保存(Preserving)に関する問題点
  • Discovery Planの検討
その後、14日以内にDiscovery Planを提出し、その後、裁判所においてPretrial Conference(Schedule Conference) が行われます(FRCP 16(a))。

Discovery Plan

記載内容は以下のとおりです(FRCP 26(f)(3))。
  • Description of Case.
  • Deadlines for amendments.
  • Requests for Admission
  • Document discovery deadlines.
  • Interrogatory deadlines.
  • E discovery.
  • Depositions.
  • Expert Discovery.
  • Motions for summary judgment.
  • Pre-trial orders.
  • Trial.
以下、各項目につき説明します。


A. Description of Case
これは、中立的な記載にとどまるものです。ですので、ここで記載について争うことはあまりないようです。

B. Amendments
当事者や請求の追加を行います。

C. Requests for Admission
争点整理手続きの一種で、当事者間において争いのない事項を明確にすることにより、その後のDiscovery手続きを効率的に進めることができます(FRCP 36)。

D. Production of Documents
    1. Voluntary 26(a)(1) Disclosure
 当事者が自らの請求の根拠となる資料等を開示することです。

    2. Discovery Request.
上記に加え、相手方から本件訴訟に関連する資料を請求します。
日本法でも、文書提出命令(民訴法220条)がありますが、文書を特定するべき範囲が全く異なります。
FRCP26(b)によれば、claimに関連するものであればprivilegedな資料以外はほぼ全て提出しなければいけません(なお、Federal, 各State, County, Judgeにより制限が課される場合があルコトに留意する必要があります。FRCP 34参照)。なお、Privilegeについても、日本法下においては馴染みのない概念ですので、稿を改めて説明したいと思っています。

したがって、ここで当事者間で交換される資料は膨大なものとなる傾向があります。特に、今般関連する資料は電子化されていること(特に電子メール)が多く、これにより、資料の量が更に増加傾向にあるといわれています。
例えば、現在私が関わっている訴訟では、当事者側の資料の精査だけで1年半かかっています。さらに、相手側の資料の精査,後述のDeposition等の手続きにも膨大な時間を費やす必要があることはいうまでもありません。

    3. e Discovery
 この点については、先の投稿の他、改めて、稿を設けて説明したいと思います。

E. Interrogatory
質問書と訳されるのが一般的で、訴訟の一方当事者から他方当事者に対する書面による一連の質問で、訴訟の追行に必要な情報の獲得を目的とするとされています(田中英夫「英米法辞典」)。この手続きについても、Federal, States, Local, Judgeによる制限が課されていることがありますので、留意する必要があります。

F. Depositions
書類のDiscovery手続きに基づき開示された書類の精査が終わった後に行われるのが一般的で、当事者同士で、関係者(当事者以外の第三者も含む。)の供述を録取する手続きです。通常、Depositionを請求した側のカウンセルのオフィスで行われます。そこで、ビデオを撮影し、Testimonyを作成し、証拠化されます。稀に、当該手続きにおいて、当事者間では解決できないような問題が生じた場合には、裁判所に電話をする等の形で、裁判所が一定程度関与する場合があります。

このDepositionの手続きの中で留意するべきなのが、Rule 30(b)(6) に基づくDepositionsです。ある事実に関するDepositionを請求する場合、請求する側は、企業や団体名のみを指定すればよく、指定された企業、団体は、当該事実について、最も適切な者を指定する義務を負います。このようにして、できるだけ多くの関連情報が証拠として提出されることを担保しています。


G. Expert Witness Discovery
専門家による証言手続き(日本法による鑑定人)です。一般的にPre trialの最後に行われ、最初にExpert Reportを交わし、その後Expert Depositionsが行われます。

H. Summary Judgment
Trialでの事実認定の手続きを経ないで、法律問題だけで本件訴訟を解決する場合に下される判決です(FRCP 56)。
Trialを経ないで紛争が解決するのは当事者の負担を考えると、重要なことで、この段階で、種々の点を理由とするmotion (申立て)を提出することが多く見受けられます。


11.02.2010

Election Protection



アメリカでは、本日11月2日はMidterm Electionの投票日でした。

私が所属している当事務所では、プロボノ活動の一環として、上記のプログラムのコールセンターが設けられ、一番大きい会議室にPCと電話機が何台も並べられ、ボランティアが対応にあたっていました。
私自身はあまり関与していなかったので、確かではないのですが、投票を拒絶されたりして、うまく投票できない人たちのためのコールセンターのようです。簡単な例では、投票所を間違えたり、時間になっても投票所が開かないの様な問題のようですが、不当に投票する権利が害されていないかをチェックする機能を果たしているのではないかと思われます。

日本では、選挙日当日に投票を拒絶されたり、問題があったり、するという話は聞いたことがないので、今日一日、何十人ものボランティアがひっきりなしにかかってくる電話に対応しているのを、物珍しく傍観しておりました。