1.28.2011

Tips for taking California Bar Exam: Part IV



Cal Bar (カリフォルニア州の司法試験)の受験を考える方に向けて、最後に、出願する際にあたっての留意事項についていくつか。この冬に受ける方には、もう遅いですね。すみません。

1.Attorney Applicantとしての出願


日本で弁護士資格、弁理士,税理士の資格をお持ちの方は、Foreign Attorney Applicantとして出願することができます。私の受験後、NY Barと同様に、LL.M.の資格(ロースクールの1年間のプログラム)に基づいて、Cal Barを受けることが出来るようになったと聞いていますが、一定の科目の履修要件がある等、NY Barと比較して、比較的この資格で受験するのは制限されているようです。
その他、日本の大学の教育をJDに相当するものとしてアプライする方法もあるようですが、手続きに時間がかかり、そのような手続きを踏んでいる方は少なくとも私は聞いたことがありません

2.SSNについて


SSN(Social Security Number)がなくても、Exemptionの申請をすれば受験することができます(従来SSNがあることが条件だったようです。)
出願のプロセスとして、まずRegistrationをして、その後Applicationを出すのですが、SSNがない場合には、Registrationは紙で行い、SSNの代わりの申し込み用の番号を入手して、実際の試験の申し込みはオンラインで行います。時間に余裕があれば、Application自体も紙で出すこともできます。


3.ハンドライトとラップトップの使用について


私はハンドライトでした。英語でのタイプに慣れていないこと、Softestというソフトをダウンロードして受験するのですが日本語のOSについてはダウンロードが適切にできることを保証していないこと、大多数のJDを卒業したばかりの人たちはラップトップ受験なのに対して、ハンドライト受験者は、年のいった人か、受験歴多数の人が多いので、相対的に自分の答案がよくみえる可能性があるとのことが、考慮要素でした。

ただ、実際に受験してみると、ラップトップがうらやましい場面もありました(答案構成をPC上ですれば時間の節約になること、Evidenceとか、同じRuleを各設問ごとに繰り返して論述する場面があり、Copy&Pasteの機能を活用できるメリットがあること等)。反対に、ラップトップで受験する人(つまり普通に今年JDを卒業したばかりの人)たちの答案(本番ではなく、Barbriの課題です)を、ちらりとみると、相当な量を書いているみたいでしたが、アメリカ人のハンドライト受験者(一応この人も今年JDを卒業したばかりの人)に聞いたところ、僕と同じ程度のページ数でした。
建前上は試験の採点は絶対評価で、受験方法によって評価方法が変わることはないと思うので、ラップトップの方がいいようにも思いますが、実際採点する試験官(日本と異なり、こちらの試験官は、合格後数年の経験しかない人とかもいたりするようです。)ことを考えると、どちらの受験にするかは、非常に悩ましいところかと思います。

2011 HSR Filing Threshold

今年のHSR filingの基準額が公表されたので、備忘録まで。

詳細は、Googleに入れると情報がたくさん出てきますが、一例はこちら

Recent Cases re Attorney-Client Privilege

Discoveryに関する投稿で触れたとおり、Attorney-Client PrivilegeとWork-Product Doctrineの両法理は、日本の法制度の下では馴染みのない概念だと思いますが、アメリカの訴訟制度を理解する上では、非常に重要な制度です。

1.定義・趣旨
Attorney-Client Privilegeとは、「法律上の助言を求めるにさいし、attorneyとclientとの間で交わされたコミュニケイションは、それに関する証拠提出やdiscoveryでの開示を拒否することができるというprivilege(特権)」です(田中英夫「英米法辞典」)。

Work-Product Doctrineとは、「訴訟を予期してその準備のために弁護士などが活動した成果」については、「裁判所が特にそれが必要であると判断した場合でなければ、discoveryでの開示が認められない」という法理です(同上)。

前掲のDiscoveryに関する投稿で述べたとおり、Discoveryの手続きがある米国では、当該紛争に関連するほぼありとあらゆる資料を相手方に提出する必要があります。 しかし、訴訟の対策をたてたり、分析をした資料まで開示しなければならないとなると、不利益なことを弁護士と相談することが出来なくなり、有効な訴訟の対策をたてることや日常的なリーガルアドバイスをすることは、ほぼ不可能になります。

したがって、このAttorney-Client PrivilegeとWork-Product Doctrineというのは、Discoveryの存在する法制度下においては、非常に重要な法理であり、平時においても、特に訴訟に関連しない部門の方であっても、常に頭の片隅にいれておくべき概念であるといえます。

2.Attorney-Client Privilege
Attorney-Client Privilegeが認められるための要件は、連邦法(Federal Rules of Evidence 502参照)及び州法のEvidence Rulesによって決められますが、通常、(i) Communications made in confidence between a client and his/her attorney (ii) for the purpose of obtaining legal adviseという2要素に分類することができます。

(i)の点
第三者が介在しない、ClientとAttorneyとの間での会話である必要があります。
下記では、いくつかのClientとAttorneyとのやり取りの場面について、Privilegeが認められるかという点に触れます。

A. In-House Lawyers
米国においては、In-House Lawyersであっても、Attorneyである以上Attorney-Client Privilegeの対象となると理解されています。
これに対して、European Court of Justiceの2010年4月29日の判決(Akzo Nobel Chemicals case)においては、Company ExecutivesとIn-House Lawyersとのやりとりは、Privilegeの対象ではないと判断されていますので、留意が必要です。

B. Testifying Expert Witness(専門家証人)
例えば、日本法に関して問題となった場合には、日本法弁護士の証言を求めたりするため、当該弁護士がExpert Witnessとなります。アメリカの法律が問題となっていたとしても、独禁法とか知財とか専門的な知識が必要とされる分野においては、Expert Witnessが選任されたりするなど、日本法下の鑑定人より、広い概念のような気がしています。
また、当事者の負担で選任することになるので、中立性が担保されているわけではなく、ある紛争上重要な問題については、双方からそれぞれExpert Witnessが選任されることになります。

連邦法である、FRCP26(b)(4)(2010年12月1日施行)では、Reportのドラフトはディスカバリーの対象ではないとされました。
しかし、最近のPennsylvania Superior Courtの判決(Barrick v. Holy Spirit Hospital of the Sisters of Christian Charity)では、Expert Witnessとして選任された医師とのやり取り(コミュニケーション)がdiscoverableであると判断しています。ただし、Work Product Doctrineの対象となる場合もあるとの判断もしています。
Californiaでも、基本的にDiscoveryの対象となると考えたほうが良いと思います(本当は条文を引用するべき箇所です。すみません。)
実務上(少なくとも私の経験上)は、上記連邦法の例外以外は、Expert Witnessとやり取りをするときは、Discoveryの対象となるかもしれないことに留意するのが無難だと考えています。

C. Paralegals, Secretaries
彼らたちは、Agents of Lawyersであるかぎり、Attorney-Client Privilegeの対象となると考えられています。

D. Consulting Experts
Testifying Expert Witnessと似て非なる概念として、LawyerのAgentとして活動していると認められるようなExperts(例えば、Legal Riskを分析するために必要な環境コンサルタント)については、Agents of Lawyersとして、Attorney- Client Privilegeの対象となると考えられています。
従って、通常のTransactionsの場面においても、Clientが直接当該コンサルタントを起用するのではなく、起用するLaw Firmがコンサルタントを起用することにより、万が一紛争になった場合にも、保護されるやり取りの対象が広がる可能性を高めることが出来ます。

E. Investment Bankers
2010年5月31日のDelaware Court of Chanceryの判決(3Com Corporation v. Diamond II Holdings, Inc)において、ClientとAttorneyとのやり取りの中に、Investment Bankerが入っていたしても、その者が"necessary" for "effective consultation"であれば、Privilegeのステータスは崩れない(waive )されないと判断されました。


(ii)の点
(ii)の点は、法律上の問題が話題となっている必要があり、全ての弁護士との会話が保護されるわけではありません。
ただ、特にIn-house attorney等の場合においては、ビジネスアドバイスとリーガルアドバイスが混在している場合があります。その場合には、Predominance Purpose testや"Because of" testを用いて、Courtがin camera reviewにより判断します。

3. Work Product Doctrine
Work Product Doctrineが認められるための重要な要素としては、(i) anticipation of litigation, or (ii) "an identifiable specific claim or impending litigation at the time the materials were prepared"
(i) のanticipationがあるかどうかは、reasonablenessによって判断され、(ii)の点は、demand letterを作成している段階においては、認められる可能性が高いようです。

1.11.2011

US Takeover Guide

またまた簡単な投稿で恐縮ですが、表題の件に関するクリフォードチャンスのメモを見つけましたので、備忘のためアップします。

実務の流れに沿って、検討するべきこと、なすべきことが記載されており、参考になるかと思います。

1.09.2011

Skiing in Sothern California (Big Bear City)


南カルフォルニアというと、椰子の木とかサーフィンとかのイメージで、常夏だと思われている方もいるかもしれませんが、冬は夜は摂氏10度を切ることもあり、セーターやコートが必要です。
また、冬は雨が降ることもあり、この冬はクリスマス前に1週間ずっと雨ということもありました(ただし、これは今まで3年以上住んで来て初めて。)。

さらに、車で2,3時間走ると山があり、そこには雪が降ります。
その山の上にいくつかスキー場があり、Big Bear いうスキーリゾートに、年末の休みを利用して行ってきました。


スキー場に向かう途中。
ちなみに、1週間降り続いた雨により、ここに向かう最短ルートが土砂崩れで閉鎖され、別のルートから向かうことに。

でも、このような絶景が続きます。





途中からチェーンを着ける必要がありました。日本でチェーンを着けるのに苦労した記憶があるのですが、こちらで買ったのは、廉価版であったにもかかわらず、かなり簡単に取り付けられました。

スキー場は、この様な山が二つあり(Bear MountainとSnow Summit)、決して大規模なリゾートとはいえませんが、車で2,3時間で来れるので、1日とか2日で十分楽しめるくらいの規模ともいえます。
雪は、基本的に人工雪のようでしたが、我々が行った前日は雪が降っていたこともあり、意外に、さらさらした雪で滑りやすかったです。もしかしたら、人工雪の質がいいのかもしれません。


Holiday Seasonだったこともあり、かなり混雑していました。
あと、カリフォルニアだからなのか、ボーダー率が高かったように思いました。

このゲレンデで、5歳の娘が初スキー。かなり平坦なので、練習するにはうってつけの斜面でした。リフトで結構並ばなければ行けないことを除けば。

泊まったロッジ。2BRで、友達家族と一緒に使いました。古いいかにも山小屋という雰囲気で良かったです。子供たちは、この庭で、(ほとんど初めての)雪遊びをしました。ここの雪もさらさらで、雪だるまを作ろうにも固めるのに相当苦労しました。


気軽に来れそうなので、また遊びに行きたいと思います。

Doing Business in the United States

皆様、明けましておめでとうございます。
今年1回目の投稿が、お正月から10日が過ぎようとしている時点で、今年の更新頻度の低さを予想しているかのようですが、今年も、「可能な範囲で」、アメリカの法律問題や文化等を紹介していければと思っています。

さて、今年1回目が簡単な投稿で恐縮ですが、Squire Sanders法律事務所のメモを見つけましたので、紹介します(私が所属している事務所とは無関係です。)。
既に、このブログでも触れた論点も多いですが(Business EntitiesやEmployment Issuesなど。)、日本企業が、米国に進出するにあたり検討するべき論点を抽出できるという点では有用なメモかと思います。もちろんここに掲げられているのが全てではない場合がほとんどだと思います。

12.09.2010

Tips for taking California Bar Exam: Part III

引き続き、カリフォルニア州の司法試験(California Bar Examination)の受験体験記です。

今回は、どのような勉強方法を採ったかという点です。

A. Bar Briの授業について
Calのバーブリの講義は、MBE科目についてはNYバー用として出回っているノートの内容とほぼ同じです。なので、そのノートがある場合には、人によっては出席する必要はないかもしれません。
ただ、Non MBE科目とEvidenceについては、そこで入手する情報が重要なので、出席するのが有益かと思います。
私の場合は、Essay workshopというのが4回あるのですが、そのうちの真中2回は出ませんでしたが、それ以外は出ました。私の場合は、ノートに書いてあることを、ただ読むだけで全て理解できないと思ったことと、どの辺が重要なのかを講義でつかむため、ほとんど出席しました。
なお、PMBRは、模試は受けましたが解説講義は出ませんでした。時間がないのが主な理由ですが、詳細な解説本をくれるので、それを見れば不明なことはないと思います。

B. ノートについて、
MBE科目については、NYのノートを使いました。基本的に、コモンローの部分はNYのものといっしょなので、僕はNYのものを使っていました(NYのノートのNY Law部分を削れば、CalBar用のノートになります)。あと、科目によってはBarbriのMini(Conviser) reviewを使っていました。
巷で出回っているノートはバーブリの講義を忠実に再現したものです。Mini Reviewよりもさらに情報量が少ないですが、講義録に沿っておりMiniよりも流れがあるような気がしました。反対にMiniをベースにすると、問題を解いた後、知らないルールに直面しても、Miniのどこかに書いてあるということが多かったです(ノートベースだと、結構書き込みが多くなりました。)。ちなみに、私は、Crim Law/Crim Pro, EvidenceはMiniを使用し、他の科目は巷のノートを使用しました。どちらを使うかは、好みによると思います。
ただし、Bigといわれるバーブリのテキストは、情報量が多すぎて混乱を招くだけなので使わない方がいい、というのが日本人受験生(NYも含めて)の間でのコンセンサスになっているようです。

C.MBE対策について
一言で言うと、問題演習をひたすら解くことです。どれだけ、問題を解くかは、結構個人差があるみたいです。私の場合、合計で解いた問題は、PMBR6日間コースの50問×6と、(解いた順(つまり優先した順)に)Introductory 各17問、Intermediate各77問、赤本200問(ただし、刑法は160問(か180問)プラス刑訴が60問)、青本(科目によってばらつきがありますが、平均すると)半分くらい(苦手な科目を優先して解いたため。)、Advanced数十問程度(うわさどおり細かすぎることを確認する程度)、それにMixed100問程度、MBE模試、PMBR模試各200問、オンラインの実際の去年の問題100問です。
この問題集の区分けについては、現在呼称が変更されているようですが、中身はほぼ一緒(問題数は少し違うようですが)のようです。
ただ、Intermediateと赤本、MBE模試、PMBR模試については、間違った問題(ただし、単純な形式ミスが原因のものを除く)については、もう1回解きました。これは、MBE模試の後から始めました。まだ青本やAdvancedの問題集に解いていない問題もあり、解いていない問題と2回目をやるかどちらにするか迷いましたが、結局間違った問題の2回目を解くことにしました。どの科目のどのエリアで間違いが多いかとか、どのエリアがまだ理解不足なのかを知ることができ、これを補えたので、私の場合は、2回目をやって正解だったと思います。これは、1回目を解いた際にどれだけ、正確に間違えた問題を理解するかの問題で、確実にできる方であれば、2回目を解くのは時間の無駄でしかないと思います。
また、青本は科目のエリアごとに問題が配置されています(赤本は各論点ばらばらに配置されています。)。赤本と難易度は同じように思えました。また、赤本と異なり各肢がなぜ間違いなのかについて、細かく解説がされています。したがって、赤本まで辿り着ける自信があるのであれば、青本から解くことをお勧めします。赤本から解くのが一般的で、この種の試験で他の人がやっていることをやらないのはお勧めしません。

D. Essay対策について
問題は、日本の司法試験の事例問題に似ている気がしました(あるいはやや簡単?)。バーブリが過去問の問題集を用意してくれるので、これをPaced Programに従いながら、答案構成をしたり、実際に書いたり、書いたものを提出して採点を受けたりします。上記問題集のほか、Essay Work Shopが合計4回あり、その中でも上記問題集に入っていない問題をときます。上記講義は、基本的には日本の司法試験予備校の解説の方が、レベルが高いと思いますが、出て全く意味がないということはないと思います。ちなみに私は4回中最初と最後の講義には出席して、真ん中2回の分はレジュメだけ見て終わらせました。
さらに、State Bar of CaliforniaのWeb siteに、2001年頃からの過去問と優秀答案が載っています。私は、これについても数年分解きました(ただ、優秀答案は余りに優秀で、自分の答案や構成と比較して落ち込まないことが重要かと思います。。。)。
なお、日本の司法試験の違いとしては、こちらのBar Examは絶対評価なので、「人とどうやって差をつけるか」という思考方法は不要で、「いかに人と同じことを書くか」という視点が重要だと思います(いくらカルバーの合格率が低いとはいえ、CaliforniaのABA CreditのLaw Schoolの卒業生のFirst time takerの75%以上が合格する試験なので。)。また、バーブリのSample Answerを見れば納得いただけるかと思いますが、とにかくたくさんのIssueをあげて(多少Remoteでも)、IRACの形式で結論付けることが大切で、論点間のつながりとか、筋のよさというのは二の次のようです。これは実務に携わっていると、なかなか大変な思考回路ですが、大多数の受験者がLaw Schoolでたてで、Law Schoolの試験ではとにかく論点を挙げまくって、いい点を取ってきた連中が、そのような方式を取るので、そのような形式をまねた方が無難だと思いました。

あと、勉強方法としては、答案構成をしたらすぐSample Answerをみるという方法をとることが多く、1時間時間を計って解くという時間が余り取れませんでした。私が問題を実際に書いたのは、バーブリに提出した4問、バーブリが行う模試6問にプラス自分で時間を計って解いた5,6問だけだったと思います。バーブリの講師は、口をすっぱくして答案構成だけではなく、実際に1時間で書けといいますが、実際に本試験を受けてみて、やはりもう少し実際に書いた方がよかったなと思いました。私の場合、本試験だと、より丁寧に書こうという意識があるのか、時間切れになる問題が多く、時間配分は余りうまくいかなかったと思っています。時間配分のトレーニングのために、できるだけ多くの答案を実際に書くことをお勧めします(ただ、実際には時間との兼ね合いで難しいとは思うのですが。敢えて。。)。

E. Performance Test (PT)対策について
これはPaced Programで指定されている問題以外はやりませんでした。答案構成だけでも、1時間半程度かかり、これには余り時間を割く余裕がありませんでした。
PTは法律を知らなくてもRuleが与えられているので、できるというのが建前ですが、実際に出る問題は、既存のRuleの枠組みはそのままで、要件が少し変わっているとか、その程度の違いしかないように感じました。また、いきなり破産法やら知財の問題が出るわけではなく、試験科目の中から出ます。したがって、Essayの勉強をすれば、PTの問題にも対処しやすくなると思います。