1.28.2011

Recent Cases re Attorney-Client Privilege

Discoveryに関する投稿で触れたとおり、Attorney-Client PrivilegeとWork-Product Doctrineの両法理は、日本の法制度の下では馴染みのない概念だと思いますが、アメリカの訴訟制度を理解する上では、非常に重要な制度です。

1.定義・趣旨
Attorney-Client Privilegeとは、「法律上の助言を求めるにさいし、attorneyとclientとの間で交わされたコミュニケイションは、それに関する証拠提出やdiscoveryでの開示を拒否することができるというprivilege(特権)」です(田中英夫「英米法辞典」)。

Work-Product Doctrineとは、「訴訟を予期してその準備のために弁護士などが活動した成果」については、「裁判所が特にそれが必要であると判断した場合でなければ、discoveryでの開示が認められない」という法理です(同上)。

前掲のDiscoveryに関する投稿で述べたとおり、Discoveryの手続きがある米国では、当該紛争に関連するほぼありとあらゆる資料を相手方に提出する必要があります。 しかし、訴訟の対策をたてたり、分析をした資料まで開示しなければならないとなると、不利益なことを弁護士と相談することが出来なくなり、有効な訴訟の対策をたてることや日常的なリーガルアドバイスをすることは、ほぼ不可能になります。

したがって、このAttorney-Client PrivilegeとWork-Product Doctrineというのは、Discoveryの存在する法制度下においては、非常に重要な法理であり、平時においても、特に訴訟に関連しない部門の方であっても、常に頭の片隅にいれておくべき概念であるといえます。

2.Attorney-Client Privilege
Attorney-Client Privilegeが認められるための要件は、連邦法(Federal Rules of Evidence 502参照)及び州法のEvidence Rulesによって決められますが、通常、(i) Communications made in confidence between a client and his/her attorney (ii) for the purpose of obtaining legal adviseという2要素に分類することができます。

(i)の点
第三者が介在しない、ClientとAttorneyとの間での会話である必要があります。
下記では、いくつかのClientとAttorneyとのやり取りの場面について、Privilegeが認められるかという点に触れます。

A. In-House Lawyers
米国においては、In-House Lawyersであっても、Attorneyである以上Attorney-Client Privilegeの対象となると理解されています。
これに対して、European Court of Justiceの2010年4月29日の判決(Akzo Nobel Chemicals case)においては、Company ExecutivesとIn-House Lawyersとのやりとりは、Privilegeの対象ではないと判断されていますので、留意が必要です。

B. Testifying Expert Witness(専門家証人)
例えば、日本法に関して問題となった場合には、日本法弁護士の証言を求めたりするため、当該弁護士がExpert Witnessとなります。アメリカの法律が問題となっていたとしても、独禁法とか知財とか専門的な知識が必要とされる分野においては、Expert Witnessが選任されたりするなど、日本法下の鑑定人より、広い概念のような気がしています。
また、当事者の負担で選任することになるので、中立性が担保されているわけではなく、ある紛争上重要な問題については、双方からそれぞれExpert Witnessが選任されることになります。

連邦法である、FRCP26(b)(4)(2010年12月1日施行)では、Reportのドラフトはディスカバリーの対象ではないとされました。
しかし、最近のPennsylvania Superior Courtの判決(Barrick v. Holy Spirit Hospital of the Sisters of Christian Charity)では、Expert Witnessとして選任された医師とのやり取り(コミュニケーション)がdiscoverableであると判断しています。ただし、Work Product Doctrineの対象となる場合もあるとの判断もしています。
Californiaでも、基本的にDiscoveryの対象となると考えたほうが良いと思います(本当は条文を引用するべき箇所です。すみません。)
実務上(少なくとも私の経験上)は、上記連邦法の例外以外は、Expert Witnessとやり取りをするときは、Discoveryの対象となるかもしれないことに留意するのが無難だと考えています。

C. Paralegals, Secretaries
彼らたちは、Agents of Lawyersであるかぎり、Attorney-Client Privilegeの対象となると考えられています。

D. Consulting Experts
Testifying Expert Witnessと似て非なる概念として、LawyerのAgentとして活動していると認められるようなExperts(例えば、Legal Riskを分析するために必要な環境コンサルタント)については、Agents of Lawyersとして、Attorney- Client Privilegeの対象となると考えられています。
従って、通常のTransactionsの場面においても、Clientが直接当該コンサルタントを起用するのではなく、起用するLaw Firmがコンサルタントを起用することにより、万が一紛争になった場合にも、保護されるやり取りの対象が広がる可能性を高めることが出来ます。

E. Investment Bankers
2010年5月31日のDelaware Court of Chanceryの判決(3Com Corporation v. Diamond II Holdings, Inc)において、ClientとAttorneyとのやり取りの中に、Investment Bankerが入っていたしても、その者が"necessary" for "effective consultation"であれば、Privilegeのステータスは崩れない(waive )されないと判断されました。


(ii)の点
(ii)の点は、法律上の問題が話題となっている必要があり、全ての弁護士との会話が保護されるわけではありません。
ただ、特にIn-house attorney等の場合においては、ビジネスアドバイスとリーガルアドバイスが混在している場合があります。その場合には、Predominance Purpose testや"Because of" testを用いて、Courtがin camera reviewにより判断します。

3. Work Product Doctrine
Work Product Doctrineが認められるための重要な要素としては、(i) anticipation of litigation, or (ii) "an identifiable specific claim or impending litigation at the time the materials were prepared"
(i) のanticipationがあるかどうかは、reasonablenessによって判断され、(ii)の点は、demand letterを作成している段階においては、認められる可能性が高いようです。

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