12.09.2010

Tips for taking California Bar Exam: Part III

引き続き、カリフォルニア州の司法試験(California Bar Examination)の受験体験記です。

今回は、どのような勉強方法を採ったかという点です。

A. Bar Briの授業について
Calのバーブリの講義は、MBE科目についてはNYバー用として出回っているノートの内容とほぼ同じです。なので、そのノートがある場合には、人によっては出席する必要はないかもしれません。
ただ、Non MBE科目とEvidenceについては、そこで入手する情報が重要なので、出席するのが有益かと思います。
私の場合は、Essay workshopというのが4回あるのですが、そのうちの真中2回は出ませんでしたが、それ以外は出ました。私の場合は、ノートに書いてあることを、ただ読むだけで全て理解できないと思ったことと、どの辺が重要なのかを講義でつかむため、ほとんど出席しました。
なお、PMBRは、模試は受けましたが解説講義は出ませんでした。時間がないのが主な理由ですが、詳細な解説本をくれるので、それを見れば不明なことはないと思います。

B. ノートについて、
MBE科目については、NYのノートを使いました。基本的に、コモンローの部分はNYのものといっしょなので、僕はNYのものを使っていました(NYのノートのNY Law部分を削れば、CalBar用のノートになります)。あと、科目によってはBarbriのMini(Conviser) reviewを使っていました。
巷で出回っているノートはバーブリの講義を忠実に再現したものです。Mini Reviewよりもさらに情報量が少ないですが、講義録に沿っておりMiniよりも流れがあるような気がしました。反対にMiniをベースにすると、問題を解いた後、知らないルールに直面しても、Miniのどこかに書いてあるということが多かったです(ノートベースだと、結構書き込みが多くなりました。)。ちなみに、私は、Crim Law/Crim Pro, EvidenceはMiniを使用し、他の科目は巷のノートを使用しました。どちらを使うかは、好みによると思います。
ただし、Bigといわれるバーブリのテキストは、情報量が多すぎて混乱を招くだけなので使わない方がいい、というのが日本人受験生(NYも含めて)の間でのコンセンサスになっているようです。

C.MBE対策について
一言で言うと、問題演習をひたすら解くことです。どれだけ、問題を解くかは、結構個人差があるみたいです。私の場合、合計で解いた問題は、PMBR6日間コースの50問×6と、(解いた順(つまり優先した順)に)Introductory 各17問、Intermediate各77問、赤本200問(ただし、刑法は160問(か180問)プラス刑訴が60問)、青本(科目によってばらつきがありますが、平均すると)半分くらい(苦手な科目を優先して解いたため。)、Advanced数十問程度(うわさどおり細かすぎることを確認する程度)、それにMixed100問程度、MBE模試、PMBR模試各200問、オンラインの実際の去年の問題100問です。
この問題集の区分けについては、現在呼称が変更されているようですが、中身はほぼ一緒(問題数は少し違うようですが)のようです。
ただ、Intermediateと赤本、MBE模試、PMBR模試については、間違った問題(ただし、単純な形式ミスが原因のものを除く)については、もう1回解きました。これは、MBE模試の後から始めました。まだ青本やAdvancedの問題集に解いていない問題もあり、解いていない問題と2回目をやるかどちらにするか迷いましたが、結局間違った問題の2回目を解くことにしました。どの科目のどのエリアで間違いが多いかとか、どのエリアがまだ理解不足なのかを知ることができ、これを補えたので、私の場合は、2回目をやって正解だったと思います。これは、1回目を解いた際にどれだけ、正確に間違えた問題を理解するかの問題で、確実にできる方であれば、2回目を解くのは時間の無駄でしかないと思います。
また、青本は科目のエリアごとに問題が配置されています(赤本は各論点ばらばらに配置されています。)。赤本と難易度は同じように思えました。また、赤本と異なり各肢がなぜ間違いなのかについて、細かく解説がされています。したがって、赤本まで辿り着ける自信があるのであれば、青本から解くことをお勧めします。赤本から解くのが一般的で、この種の試験で他の人がやっていることをやらないのはお勧めしません。

D. Essay対策について
問題は、日本の司法試験の事例問題に似ている気がしました(あるいはやや簡単?)。バーブリが過去問の問題集を用意してくれるので、これをPaced Programに従いながら、答案構成をしたり、実際に書いたり、書いたものを提出して採点を受けたりします。上記問題集のほか、Essay Work Shopが合計4回あり、その中でも上記問題集に入っていない問題をときます。上記講義は、基本的には日本の司法試験予備校の解説の方が、レベルが高いと思いますが、出て全く意味がないということはないと思います。ちなみに私は4回中最初と最後の講義には出席して、真ん中2回の分はレジュメだけ見て終わらせました。
さらに、State Bar of CaliforniaのWeb siteに、2001年頃からの過去問と優秀答案が載っています。私は、これについても数年分解きました(ただ、優秀答案は余りに優秀で、自分の答案や構成と比較して落ち込まないことが重要かと思います。。。)。
なお、日本の司法試験の違いとしては、こちらのBar Examは絶対評価なので、「人とどうやって差をつけるか」という思考方法は不要で、「いかに人と同じことを書くか」という視点が重要だと思います(いくらカルバーの合格率が低いとはいえ、CaliforniaのABA CreditのLaw Schoolの卒業生のFirst time takerの75%以上が合格する試験なので。)。また、バーブリのSample Answerを見れば納得いただけるかと思いますが、とにかくたくさんのIssueをあげて(多少Remoteでも)、IRACの形式で結論付けることが大切で、論点間のつながりとか、筋のよさというのは二の次のようです。これは実務に携わっていると、なかなか大変な思考回路ですが、大多数の受験者がLaw Schoolでたてで、Law Schoolの試験ではとにかく論点を挙げまくって、いい点を取ってきた連中が、そのような方式を取るので、そのような形式をまねた方が無難だと思いました。

あと、勉強方法としては、答案構成をしたらすぐSample Answerをみるという方法をとることが多く、1時間時間を計って解くという時間が余り取れませんでした。私が問題を実際に書いたのは、バーブリに提出した4問、バーブリが行う模試6問にプラス自分で時間を計って解いた5,6問だけだったと思います。バーブリの講師は、口をすっぱくして答案構成だけではなく、実際に1時間で書けといいますが、実際に本試験を受けてみて、やはりもう少し実際に書いた方がよかったなと思いました。私の場合、本試験だと、より丁寧に書こうという意識があるのか、時間切れになる問題が多く、時間配分は余りうまくいかなかったと思っています。時間配分のトレーニングのために、できるだけ多くの答案を実際に書くことをお勧めします(ただ、実際には時間との兼ね合いで難しいとは思うのですが。敢えて。。)。

E. Performance Test (PT)対策について
これはPaced Programで指定されている問題以外はやりませんでした。答案構成だけでも、1時間半程度かかり、これには余り時間を割く余裕がありませんでした。
PTは法律を知らなくてもRuleが与えられているので、できるというのが建前ですが、実際に出る問題は、既存のRuleの枠組みはそのままで、要件が少し変わっているとか、その程度の違いしかないように感じました。また、いきなり破産法やら知財の問題が出るわけではなく、試験科目の中から出ます。したがって、Essayの勉強をすれば、PTの問題にも対処しやすくなると思います。

12.07.2010

Tips for taking California Bar Exam: Part II

引き続き、私のカリフォルニア州の司法試験(California Bar Exam)受験体験記について。

今回は、勉強のスケジュールについて私がしたことや感じたことをまとめます。

A. PMBR 6日間コース (冬)
PMBRというMBE対策専門の予備校は、年末に6日間でMBEの対策をするコースがあります。年末までに5月に受講するコースを申し込めば、年末の分(これは2月の試験用のもの)をただで受講できるという仕組みになっていました。このコースを受講することには賛否両論あるようですが、僕はこれを受けました。わからないことだらけのまま、6日間を終えてしまいましたが、大体どんな問題が出るのかを把握する(そして、大変な試験だということを実感する)、科目の大まかな体系を理解する、分からない単語を調べておく(5月に調べる手間を省く)、という意味では役に立ちました。

B.       年末後春学期終了まで
基本的には、ロースクールの勉強に専念していましたが、行き帰りの車の中で、PMBRでもらったCDを流していました。最初は、何を言っているのかさっぱりわかりませんでしたが、バーブリが始まり、試験直前になると、授業の内容や勉強した内容と照らしわせながら聞くことができるようになり、いい復習になっていました。年によって、CDの内容が変わっているかもしれませんが、基本的にPMBRの専属の講師が担当している科目はわかりやすかったです。僕の持っているものだとContractsは大学の教授が担当だったのですが、最後まで何を言っているのか理解不能でした。
また、実際に勉強というわけではありませんが、もらったノートの中から、どのノートをベースにして勉強するかだけは、予め決めておきました。NYバーの合格体験記や合格者の話を聞いていて、落ちるパターンの中に、いつまでたってもどのノートで勉強するかを決められず、情報の一元化ができないというのがあると聞いており、短期間で準備する試験である以上、すぐスタートが切れるようにしておきたかったからという理由からです。ノートの内容については後述します。

あと、試験関係でしたことは、MPRE(3月)ぐらいです。試験2週間前から、ロースクールのアサインメントの間を縫ってやっていたので、実質2,3日くらいの時間しか取れなかった気がしますが、それだと、お恥ずかしながら、合格ぎりぎりのラインしか取れませんでした。。予想以上に、難しかったです。

C.      春学期終了後PMBR6日間コースまで
私は、春学期の試験終了後すぐ勉強をはじめました。
PMBRの6日間コースを受けるのに、年末と同様にまっさらの状態で受けても仕方がないと思って、それまでにMBEの科目のノート(6科目分)を読んで、わからない単語をメモしたり、わからないコンセプトやルールにマークしたりしておきました。

D. PMBR6日間コース (春)
PMBRの6日間コースでは、年末に一度受けていたということもあり、午前中PMBRの校舎で50問とき、午後の解説は聞かずに、図書館に行って自分で復習していました。また、その頃になると、Barbriの資料が届けられる(またはとりにいく)ので、次の日の科目の予習として、17問のIntroductoryとWeb上の解説(これは結構評判が良いです。)を聞いていました。

E. Barbri期間中(前半)
基本的にBarbriで配布されるPaced Programというのに沿ってやっていましたが、当然のことながら、PMBRの演習問題(赤本と青本)をとく時間が入っていないので、その部分を加える必要があります。私の場合は、Advancedの問題は、要求する知識が細かすぎるという噂だったので、Advancedの問題は解かずに、Intermediateと赤本をまず解いていきました。それでも、3、4日で1科目を終わらせるペースでバーブリは進んでいくので、その間にIntermediate77問と赤本200問をやるのが精一杯でした。あと、EssayはPaced Programに従って書いていました(実際に1時間で書けという指示を、答案構成だけで済ませることはありましたが。)

上記は、MBE科目のときの流れですが、途中で2週間程度Non MBE科目の授業が入ります。そのときに、MBEの問題演習の遅れた分を取り戻したり、科目によっては青本を解き始めたりしました。

F. Barbri期間中(後半)
どこで、Barbriを受講するかによりますが、大体6月終わり頃にMBE模試があります。
私の場合は、そこまでにIntermediateと赤本はすべて終わらせ、それまでに、科目がミックスになっている問題をやったことがなかったので(日本の択一試験と異なり、本試験は科目がミックスされている)、そのトレーニングをするために、ミックス問題集を50問程度解きました(ただ、この問題集の難易度がそれ程高くなく、あまり参考にはなりませんでしたが。要は、問題文を一番上から読むのではなく、一番最後のCallの部分と答えの選択肢を読んで、何の科目のどんな論点かを把握するのがいいとのことでした。)。


私の場合は、LAで受けたのですが、ちょうど本試験の1ヶ月前にMBE模試があり、それから2週間後にPMBR模試があり、その意味では調整がしやすかった気がしました。
また、MBE模試とPMBR模試の間にEssayの模試があり、この期間はMBEを重点的に勉強する週とEssayを重点的に勉強する週とを隔週で繰り返していました。
PMBR模試後は、幸い模試の点数もそれ程悪くはなかったし(両方とも119点)、まだEssayの完成度に自信がなかったので(特に、今年から加わったEvidenceのCal部分とCivil ProcedureのCal部分)、Essayを重点的に勉強しました。
さらに、NCBEが去年のMBEの問題を100問だけオンライン上で販売しています(20ドルくらい。オンライン上でしか解くことができず、毎年試験が終わると見られなくなってしまうようです。)。私は、これも試験の1週間前に最近の傾向に慣れるために、解きました。
結局、この期間MBEの勉強は、主に下記に触れるとおり、Intermediateと赤本、2回あった模試の間違った問題の見直しに焦点を絞っていました。

G. その他全体的なスケジュールについて
(1)いつから勉強を始めるべきか。
なるべく早く始めるにこしたことはない、というのが一般的に言われていることかと思います。
が、MBEは、ご存知のとおり200問(100ページ)を6時間で解く試験です。ネイティブであっても最初から時間内に解くのは難しいという話も聞きます。このテクニックは、2ヶ月間集中して訓練して身につけるもので、ピークのときに試験を受けるとその一瞬だけ解けるようになる、というのが一般的にいわれているイメージです。
なので、私の個人的な意見としては、卒業後試験までに集中して、MBE対策をするのがお勧めです。逆に、エッセイとかPTの部分は長期間で少しずつやる勉強の方が向いていると感じました。最後まで、自分の型みたいのを作ることができず、苦労しました。もし、卒業前に、バーの勉強をする余裕があるのであれば、ノートを見て、エッセイやPTを解いてみるのは役に立つかもしれません(バーブリの資料が手元になくても、State Bar of CaliforniaのWebsiteに過去問が載っています。)。

(2)勉強時間合計
私の場合、5月の初めくらい(ロースクールのテストがおおむね終わってから)から受験日の7月末くらいまで、朝9時くらいから夜8時くらいまで&帰宅後1、2時間勉強していました。UCLAの図書館が閉まるのが早かったので一日の勉強時間はこのくらいでしたが、他大学の人の中には夜12時くらいまで図書館にこもる人もいたみたいです。 半日休むことはありましたが(これもUCLAの図書館が土曜日4時とか終わってしまったり、日曜日は午後1時からしか空いていなかったりしたため)、丸一日休むことは一度もなかったです。ただ、3ヶ月弱の期間だし、睡眠時間は毎日ある程度とっていたので、それ程体力的に辛いとは思いませんでした。むしろ、休む方が、精神的に不安をあおられていたような気がします。


11.25.2010

Tips for taking California Bar Exam: Part I


ニューヨーク州の司法試験の結果発表から遅れること2週間、先週末に漸く、2010年夏のカリフォルニアバー(カリフォルニア州の司法試験)の発表がありました(妻は無事合格していました!)。
そろそろ、来年に向けて情報収集を開始する方もおられるかと思い、私のカルバー(Cal Bar) 受験体験記を、その後追加して入手した情報と共に、何回かに分けて提供したいと思います。なお、NY Barの情報は、基本的には私が受験した2007年の際に収集した情報を元にしているので、現在とは異なることがあるかもしれません。ご了承下さい。

まず、初回は、NYバーとの違いについて。
よくNY Barに比べると、CA Barの方が難しいと言われます。
確かに、外国人のFirst time takersの合格率だけをみると、NYでは大体50%くらいなのに対して、CAでは2割程度です。
ただ、受験者数が圧倒的に違いますし、下記の通り、日本で実務経験のある弁護士にとっては、どちらが簡単かというのは一概には言えないように思います。

1.MBE (択一)
テスト自体は、50州共通のテストなので、一緒のものです。
大雑把ですが、NYではScaleで130点台、Rawで110点台後半を取る人が合格者の9割と言われているのに対して、CAでは各々140点台、120点台が要求されているようです。
この10点差がどのくらい重いかということですが、感覚的には、日本の択一で合格点が2~3点違うというイメージでしょうか。
ちなみに、今年の受験者の全国平均は143点らしいです。


2.Essay
 CAは全部で6問を各1時間で解くのに対して、NYは4問を各45分で解くので、CAの方がたくさん書く必要があります。
そのため、試験期間がCAは3日間あります(NYは2日間)。
勉強する範囲は、科目数はCAが(数え方にもよりますが)14に対して、NYは20数科目ありますが、NYでは細かい科目(例えば、レジュメ1枚で終わるような科目)や殆ど出題可能性がない科目もあるらしく、特定の科目を重点的に勉強することになるそうです(例えば、憲法はEssayではほぼ出題されないらしい。)。
これに対して、CAは満遍なく14科目が出題され、しかもたまにすごくマイナーな論点が出たりします(しかも、日本の司法試験と違って、絶対評価なので、マイナー論点でも一通りのことを書く必要があります。)。
CAとNYとの一番の違いはこの点だと思います。
時間はCAの方が長いですが、45分の間に1通仕上げないといけない方が大変ということも出来るかもしれません。実際に、本試験では1時間でも、時間内に仕上げるのは相当辛いです(書かなければいけないことが多いという意味で。)。なので、その点は余りデメリットだとは考えませんでした。
なお、Essayの試験範囲は、2007年の夏から増えていて(主にコモンローしか聞かれなかった科目がCAの State lawについても聞かれるようになりました。)、私が受験した年には幸い聞かれなかったものの、その後は、結構聞かれているようなので、注意が必要です。


3.PT (Performance Test)
CAは、CA独自の試験で2問を各3時間で解くのに対して、NYでは1問を90分で解きます。
これは、 日本の司法研修所の起案に少し似ていて、FactsとRulesが与えられて、問題に適切なRuleをピックアップして、それに与えられたFactsを当てはめていくというもので、実務を経験している者にとっては入っていきやすい試験形態だといえます。最初演習問題をやったときは、難しいと感じましたが、段々慣れていき、実際、私もPTだけは出来たという自信がありました。
CAはPTの比重が重いので(26%、NYは10%くらい)、この点はメリットといえると思います。


4.その他
他にも、カリフォルニアに居住している方であれば、AlbanyやBaffalo(NY州の郊外)まで移動しなくていい、時差調整をしなくてもいい(カリフォルニアにいながらNYを受けるには、時差を考慮して、毎日朝4時くらいに起きて体を慣らしておく必要があるそうです。)、パソコン受験が保証されている(NYは抽選)、というメリットもあります。(ちなみに僕はハンドライトでしたが。)
なお、CAの受験料は高い!(私も受験を決めてから気づいたのですが。。。) です。NYは250ドルでいいのに対して(但し、2011年からはかなり高額になるそうですね。)、CAだと1400ドル位します(登録料160ドル、受験料700ドル、モラル認定料400ドル、その他PC受験料100ドル等諸費用)ので、ご注意を。

11.24.2010

FCPA: Strong and Getting Stronger

表題のWSJの記事のご紹介。

ここ2年の罰金の総額が$2 billionというのは驚きです。
あと、半分以上のケースが、非米国企業又は非米国企業の子会社という点にも留意が必要ですね。

最近投稿が少ないので、取り急ぎ簡単に。

11.03.2010

Developing A Discovery Plan

日本とアメリカの訴訟の仕組みにおいて、最も大きな違いの一つと言ってもいいのが、このDiscoveryの手続きです。

既に本ブログでもe Discovery等については触れていますが、本稿ではDiscovery全体の手続きについて概観したいと思います。

なお、Discoveryの定義ですが、民事手続においては、Trialの前にその準備のために、当事者が互いに、事件に関する情報を開示し収集する手続であり、争点を明確にさせる情報など広く訴訟物に関連性のあるいかなる事項を含むので、「証拠開示」という訳語は狭すぎるとされ、「開示手続」と訳すのが適切であるとの記載があります(田中英夫「英米法辞典」)。

Federal Courts v. State Courts
当然のことながら、手続きの根拠となる法令が異なります。ただ、一般的にFederalの方がよりformalで、かつ、federal judgesがそれぞれのmodel formを持っていることが多いです。
以下の説明は、主にFederalの手続きを対象とします。

Early Conferences
原告が訴状を提出した後、当事者間でEarly Conferenceを行います(FRCP 26(f))。この時に以下の事項を検討します。
  • 当事者間の請求、抗弁の内容,根拠
  • 和解等早期に訴訟を終結できるかの可能性
  • Rule 26(a)(1)(後述)に基づくDiscoveryのアレンジ
  • Discoveryの対象となる情報の保存(Preserving)に関する問題点
  • Discovery Planの検討
その後、14日以内にDiscovery Planを提出し、その後、裁判所においてPretrial Conference(Schedule Conference) が行われます(FRCP 16(a))。

Discovery Plan

記載内容は以下のとおりです(FRCP 26(f)(3))。
  • Description of Case.
  • Deadlines for amendments.
  • Requests for Admission
  • Document discovery deadlines.
  • Interrogatory deadlines.
  • E discovery.
  • Depositions.
  • Expert Discovery.
  • Motions for summary judgment.
  • Pre-trial orders.
  • Trial.
以下、各項目につき説明します。


A. Description of Case
これは、中立的な記載にとどまるものです。ですので、ここで記載について争うことはあまりないようです。

B. Amendments
当事者や請求の追加を行います。

C. Requests for Admission
争点整理手続きの一種で、当事者間において争いのない事項を明確にすることにより、その後のDiscovery手続きを効率的に進めることができます(FRCP 36)。

D. Production of Documents
    1. Voluntary 26(a)(1) Disclosure
 当事者が自らの請求の根拠となる資料等を開示することです。

    2. Discovery Request.
上記に加え、相手方から本件訴訟に関連する資料を請求します。
日本法でも、文書提出命令(民訴法220条)がありますが、文書を特定するべき範囲が全く異なります。
FRCP26(b)によれば、claimに関連するものであればprivilegedな資料以外はほぼ全て提出しなければいけません(なお、Federal, 各State, County, Judgeにより制限が課される場合があルコトに留意する必要があります。FRCP 34参照)。なお、Privilegeについても、日本法下においては馴染みのない概念ですので、稿を改めて説明したいと思っています。

したがって、ここで当事者間で交換される資料は膨大なものとなる傾向があります。特に、今般関連する資料は電子化されていること(特に電子メール)が多く、これにより、資料の量が更に増加傾向にあるといわれています。
例えば、現在私が関わっている訴訟では、当事者側の資料の精査だけで1年半かかっています。さらに、相手側の資料の精査,後述のDeposition等の手続きにも膨大な時間を費やす必要があることはいうまでもありません。

    3. e Discovery
 この点については、先の投稿の他、改めて、稿を設けて説明したいと思います。

E. Interrogatory
質問書と訳されるのが一般的で、訴訟の一方当事者から他方当事者に対する書面による一連の質問で、訴訟の追行に必要な情報の獲得を目的とするとされています(田中英夫「英米法辞典」)。この手続きについても、Federal, States, Local, Judgeによる制限が課されていることがありますので、留意する必要があります。

F. Depositions
書類のDiscovery手続きに基づき開示された書類の精査が終わった後に行われるのが一般的で、当事者同士で、関係者(当事者以外の第三者も含む。)の供述を録取する手続きです。通常、Depositionを請求した側のカウンセルのオフィスで行われます。そこで、ビデオを撮影し、Testimonyを作成し、証拠化されます。稀に、当該手続きにおいて、当事者間では解決できないような問題が生じた場合には、裁判所に電話をする等の形で、裁判所が一定程度関与する場合があります。

このDepositionの手続きの中で留意するべきなのが、Rule 30(b)(6) に基づくDepositionsです。ある事実に関するDepositionを請求する場合、請求する側は、企業や団体名のみを指定すればよく、指定された企業、団体は、当該事実について、最も適切な者を指定する義務を負います。このようにして、できるだけ多くの関連情報が証拠として提出されることを担保しています。


G. Expert Witness Discovery
専門家による証言手続き(日本法による鑑定人)です。一般的にPre trialの最後に行われ、最初にExpert Reportを交わし、その後Expert Depositionsが行われます。

H. Summary Judgment
Trialでの事実認定の手続きを経ないで、法律問題だけで本件訴訟を解決する場合に下される判決です(FRCP 56)。
Trialを経ないで紛争が解決するのは当事者の負担を考えると、重要なことで、この段階で、種々の点を理由とするmotion (申立て)を提出することが多く見受けられます。


11.02.2010

Election Protection



アメリカでは、本日11月2日はMidterm Electionの投票日でした。

私が所属している当事務所では、プロボノ活動の一環として、上記のプログラムのコールセンターが設けられ、一番大きい会議室にPCと電話機が何台も並べられ、ボランティアが対応にあたっていました。
私自身はあまり関与していなかったので、確かではないのですが、投票を拒絶されたりして、うまく投票できない人たちのためのコールセンターのようです。簡単な例では、投票所を間違えたり、時間になっても投票所が開かないの様な問題のようですが、不当に投票する権利が害されていないかをチェックする機能を果たしているのではないかと思われます。

日本では、選挙日当日に投票を拒絶されたり、問題があったり、するという話は聞いたことがないので、今日一日、何十人ものボランティアがひっきりなしにかかってくる電話に対応しているのを、物珍しく傍観しておりました。

10.31.2010

Employment Risk Management

先日、Japan Business Association of Southern Californiaという経済団体が主催するセミナー(講師:Lisa Kitagawa先生、望月良子先生)が開かれましたので、聴講してきました。

私が気になった点が中心となりますが、簡単に紹介したいと思います。

1. Job Application
  • 年齢の欄は設けない。アメリカでは、年齢に基づく差別は下記の通り違法です。
  • At willであることを明確にする。
  • Reference Check Releaseを設ける。これは、前のEmployerに申込者の前職での職務状況について聞いても良いことを同意する旨の文言です。これにより、実際に面接をする前にも、前のEmployerに話を聞くことができ、スクリーニングをかけられます。
  • 種々の申込資格への制限についても、Bona Fide Occupational Qualificationであれば許される(例えば、女性洋服のモデルの応募資格を女性に限る場合等)。
2.Interview
  • 質問は職務に関与する範囲で行うことを念頭に置く。個人的に日本でのリクルート活動を経験したわけではないので、日本での面接の実態について精通しているわけではありませんが、一般的な日本での面接と比較しても、かなり厳格に考えた方が良いと思います。
  • US Federal Equal Employment Opportunity Lawsにおいては、下記の項目に基づく差別を禁じています。詳細はこちら
    • Age
    • Race
    • Color
    • Gender
    • National Origin
    • Genetic Information
    • Religion
    • Disability
  • 日本の憲法14条列記事項と似ていますが、異なるところとしては年齢の項目がある点です。障害についても、憲法14条には列記されていませんが、障害者基本法がカバーしていると理解しています。
  • さらに、Californiaでは、下記の項目に基づく差別を禁じています。詳細はこちら
    • Medical Condition
    • Marital Status
    • Sexual Orientation(性的指向)
    • Pregnancy, childbirth
  • 例えば、Marital Statusについては、勤務時間帯を示してこの時間に働くことに支障はあるか、とか、出張勤務をするのに問題があるか、という聞き方をすることになります。
3.Job Description
  • これも日本においては、馴染みの薄いものかもしれませんが、Job Descriptionにおいて職務内容を明確にする必要があります。
  • また、ここで、雇用者と従業員との間で、当該従業員がexemptなのか、non-exemptなのかを明確にしてお互い了解を得ておくというプロセスが重要。なお、exempt employeesに分類されますと、雇用者は従業員にOvertime payを支払う義務がなくなります。どのような場合がexemptなのかについては、ケースバイケースの判断になることが多く、故に、よく訴訟の原因になる点でもあります。公的なものではありませんが、こちらが参考になります。
  • 職務内容の項目の最後に、catch all条項をつけておくことをお勧めするとのことです。
4.Posters
  • どのような項目、内容について職場に貼り出しておかなければいけないかについては、Federalについては、こちらを参照。Californiaについては、こちらを参照。
5.Employee Handbook
  • 日本法上の就業規則に相当するものですが、就業規則よりもより詳細に、ページ数も多いことが一般的です。
  • ここでも、At willであることを強調することが重要です。
  • さらに、Electronic Communicationの取り扱い、Internal Complaint Proceduresについても、留意して作成する必要があります。
6.Arbitration Agreement (仲裁契約)
  • 雇用者と従業員との間で何らかの紛争、問題が生じた場合には、訴訟ではなく、仲裁によって解決する旨を予め定めておくものです。
  • 通常は、Employee Handbook、同Handbookの受領通知(Acknowledgement and Agreement)の両方に記載があります。
  • そもそも、この仲裁同意条項を設けるかどうかも検討する必要があります。米国企業においては、仲裁手続きによると控訴できない(一回の判断で決まってしまう)ことから、仲裁同意条項を設けないという判断をすることもあります。
  • しかし、個人的には、日本企業は同条項を設けたほうがいいのではないかと思っています。米国の訴訟制度には、Discovery手続きがあり、かかる手続きに日ごろから備えている日本企業は少ないように思います。また、陪審制も日本企業にはなじみのない制度ですし、Juryがどのような判断を下すかの予測可能性が少ないとも言われます。
  • ただし、仲裁手続きにおいても、手続きをどう進めるかは、当事者間の合意又は採用された仲裁廷のルールによりますので、Discoveryの手続きが存在する場合もあります。従って、仲裁同意条項にどのルールを採用するべきかについては、慎重な検討が必要だと思われます。
  • また、同条項を設ける際に、Consideration (対価)を提供する必要がある場合があります。締結後変更する場合等には、2週間程度の賃金や追加休暇(PTO)をConsiderationとして提供することを勧められていました。
7.離職時の手続き
  • 従業員は、At willのステータスであるのが通常ですので、いつ従業員との契約を終了させてもよいことになります。ただ、差別に基づく解雇は違法ですので、他の従業員と比して、公平な観点から契約を終了させることが重要になります。
  • レイオフ等離職時に2週間分等の追加給与を与える例がありますが、これは義務ではありません。
  • レイオフや解雇等の場合には、その後当該従業員が不正を働かないか注意をする場合もあります。
  • Separation & Release Agreementは、従業員に離職手当を与えることを対価として、会社に対して一切の訴えを提起しないことを約する契約です。もし、従業員が40歳以上の場合には、本書面の締結に際して21日以上の考慮期間を与える必要があり、もし、40歳以上の従業員が2名以上離職する場合には、45日以上の考慮期間を与える必要があるとのことです。また、法定記載事項もあるので留意する必要があります。
8.その他
FLSA(Fair Labor Standards Act)に関する説明をしたDOLのサイトです。ご参考まで。

10.04.2010

M&A Basics

表題の所内のセミナーに出席しました。セミナーの概要に加え、自らの経験に基づく点にも触れながら、気になった点を取り出して書き留めておこうと思います。

I. 買収価格
Enterprise Value + Cash - Indebtedness - Transaction Expenses - Escrow Payment + Working Capital Adjustment = Purchase Price Payment (Equity Value)

1. Enterprise Value
通常は、EBITDAのx倍(なお、EBITDAの算定の基礎となるEarningsをどの程度の期間でみるかも決定する必要があります。直近12ヶ月とすることが多いもののそれより短期の場合もあります。)に、その他の要素を検討します。例えば、Non-recurring expenses, Excessive compensation, Professional fees, Severance expenses.

2. Working Capital Adjustment
通常は、Current Assets (e.g. A/R) -(minus) Current liabilities (e.g. A/P) で算出されます。

3. Escrow Payments
Dealing with PE Fundsの稿でも述べた通り、General Escrowの他、特定の訴訟や環境問題だけのためのEscrowを設けることもあります。

4. Deferred Purchase Price
これには、Earnouts ProvisionsやEmployment Agreementに基づくボーナスの支払い分等が挙げられます。

5. EVについてStart-upsの場合の例外
Revenueで計算されることが多いようです。起業してすぐ利益(Earnings)が出ることは稀であるため。

II. Purchase Agreementのドラフティングにあたっての留意点
この点は、本当に私の主観的基準により取り上げた留意点ですので、私以外の方に参考になる部分は少ないかもしれません。ただ、これは特にアメリカでの取引だけでなく、世界中どこでの取引でも当てはまる部分が多いと思われます。

1. 定義条項
  • "Knowledge":"Buyer", "Seller"だけではなく、その組織の中の誰のKnowledgeなのかという点を明確にする。例えば、Senior Management(これ自体も定義が必要)、CEOなど。さらに、Actual v. Constructiveなのかという点も交渉事項になりえます。
  • "Material Adverse Effect":近年、たくさんの裁判例がでているところであり、綿密なドラフティングが必要なところです。買主としては、出来るだけ多方面から予想しうる事態を出来るだけ明確にした形で規定する必要があります。
  • "Losses": Consequential/Punitive, Diminution in value/"multiple of earnings", Cost to bring business into compliance 等
2. 表明保証条項
  • Disclosure scheduleにおいて、"Reasonably apparent" v. explicit disclosureか。
  • その他、通常の表明保証事項のリストがありましたが、申し訳ありませんが、割愛させて頂きます。
3. Pre-Closing Covenants
  • No-shop clause、HSR等
  • Seller's Notice of Changesにおいて、Sellerが通知をした後の処理については留意点(一定の期間に何らかのアクションをとる義務がBuyerにあるのか、Closeした後アクションを取ったとき等)
4. Indemnity
  • Duration of Survival Periods, "fundamental" representation (eg. organization, due authority, capitalization) については無期限、またその他Statute of Limitationを考慮、その他については一定の期間を設けるの通常。 
  • Cap & Basket: Basketの中には、Deductible v. Tipping (ヒットするとそれまでの分も補償する必要がある仕組み。)。また、fundamental rep等を例外とすることもあり。
5. その他
  • Foreign antitrust regulations
  • Transfer Pricing
  • Deemed dividend issue
  • Fiduciary duties of directors

9.26.2010

442 -Live with Honor, Die with Dignity-

先日、大学の同窓会の主催で、上記のタイトルの映画(邦題:「442日系部隊・アメリカ史上最強の陸軍」)の鑑賞会が開かれ、観に行ってきましたので、ご紹介します。
第2次世界大戦中の第442部隊の目覚ましい活躍については、こちらをご覧下さい。

同映画を制作されたすずきじゅんいち監督もいらして下さり、この映画を制作した目的、撮影の裏話等のお話を聞け、大変貴重な機会でした。

この映画は、アメリカに住む日系アメリカ人の話ですが、是非、日本に住んでいる日本人の方に観て頂きたい作品だと感じました。監督も同じことを言っておられました。
日本にいると意識することがほとんどないと思いますが、この映画を通じて、日本人であることとは何かということを強く問いかけられます。また、当時の日系アメリカ人が、アメリカ人であることを否定され、自己のアイデンティティの拠り所を失うことがどれだけ辛いことかということも強く訴えかけられます。
日本に住んでいては、通常感じることの出来ない感覚を体感することが出来る映画だと思います。

私は、子供の頃4年半程ロンドンにいましたが、当時も、言葉も習慣も考え方も異なる人たちに囲まれ、日本人であることを否が応でも強く意識させられました。ただ、帰国後は、まだ成長しきっていなかったというのもあるかもしれませんが、そのような意識は霧散してしまいました。しかし、今またアメリカに滞在していると、アイデンティティという概念がいかに重要なのかというのを、強く意識させられる日々です。特に、自分の子供たちは、今のところ人生の大部分をアメリカで暮らしています。彼らは自分のアイデンティティをどこに求めるのかということを考えだすと、悩みは尽きません。

今後どんどんグローバル化するといわれている世界の中では、自分のアイデンティティをどこに求めるのかというのは、益々重要になってくるのではないかと思われます。
このようなことをつらつらと考えるいい機会を与えてくれた映画でした。

Dealing with Private Equity Funds

米国のPEファンドの現況及びPEファンドを相手方とするM&A取引における留意点について概観します。

今後PEファンドがポートフォリオ会社を売却するという機会が増えてくると思われます。日本の企業にとっては、米国での事業展開を考える上で、かかる会社を取得するというのはひとつの選択肢になるかと思われます。

I. 米国におけるPEファンドの現況

Limited Partners (Silent Investorsとも呼ばれる。)
  • 主に、Pension funds (e.g. CALPERS), insurance companies, university endowments (e.g. Harvard Endowment Fund), and major charitable organizations, and some high net worth individualsがLPとして出資を行う。特に、最近増えているのが、中国や中東のSovereigns。世界のSevereignsが保有している資産総額は、USD 30.7T。当然のことながら、彼らにアプローチをするローファームも多いようです。
  • 投資期間は、主に7~10年程度。
  • UBTI (Unrelated business taxable income), VCOC (Venture Capital Operating Company)として認められ、非課税となるよう仕組むのが一般的。
PE Fund Management
  • GPが受け取るFeeとしては、2% Management Fee又は20% Carried Interest (Partnershipから生じる利益の内初期投資額を除いたもの)が通常。
  • 業界全体で約USD 1.0 trillionもの資金(Dry Powder)が眠っていると言われている。
  • LPの投資期間が7~10年で、過去2年間の異常事態により、ポートフォリオの売買ができなかったことから、今後ポートフォリオ会社の売却が増えることが予想される。
Leverage/Financing Acquisitions
  • 歴史的には30%程度がEquity Investment、それがバブル時に10%になり、現在は50%又はそれ以上つまなくてはいけない状態が続いている。
  • さらに、LOIのfinancing conditionsの記載方法が厳しくなってきている(留保事項が多い。)。
II. PEファンドとのM&A取引の際の留意事項
1.PEファンドからポートフォリオ会社を購入する場合
  • 売却先としてはStrategic BuyerとFinancial Buyer(また別のPEファンド等)の二通りが考えられますが、Strategic Buyerの方が通常シナジー効果をみて、高値でbidしてくることが多いので、PEファンドからすると、Strategic Buyerに売却したいと考える場合が多い。
  • Purchase Agreementを作成し、交渉する際に留意するべきなのは、Indemnity Clauseです。もちろん、通常のM&Aにおける重要性は否定しませんが、PEファンドから購入する場合には、売却後、同ファンドは売却金をLPに償還するのが通常です。いくらIndemnity clauseで売主の補償義務を規定していても、償還当時、実際当該条項が適用される事象が発生ししていなかったり、発生していたとしてもそのことをファンドが知らなければ、かかる償還は有効となってしまい(例えば、California Corporation Code Sec. 15905.09. Delaware Code Chapter 6. § 15-309)、Indemnity Clauseが有名無実化してしまう可能性があります。
  • この点に、対応するために有効なのが、escrowです(通常、2.5%~20%程度)。さらに、特定の事項(環境や係属している訴訟など)やworking capitalだけのために別途escrowを設けることもあります。
  • その他、保険をかけることもありますが、保険料(premium)が高いことから一般的ではありませんが、特定の事項(Product LiabilityやEnvironmental Conditions)を対象とするのであれば、有益である場合もあります。
2.PEファンドへ子会社等を売却する場合
  • 上記で触れたように、LOIのfinancing conditionsの記載方法が厳しくなっているのは、PEファンドがfinanceをつけるのが難しくなって来ていることの現れのようです。
  • 銀行とのterm sheetsを見せてもらう、当該ファンドまたはSponsorの銀行とのtrack recordのチェックということが考えられますが、それ以上に、このようなfinancing arrangementは、特にこのご時勢、状勢がすぐ変わるようで、これだけではあまり意味がない場合も多いようです。
  • 今のところ、最も強力な手段は、reverse break up feeを設定すること。一般的な相場としては、1%から3%ですが、既存のビジネスに多大な影響があるとか、経営陣,従業員の地位が不安定になる恐れが大きいとか主張して、もっと大きい額を勝ち取れるよう交渉して行くのが得策のようです。
  • LPからもcommitment letterを取得すること(が、リーマンショック以降これに応じるLPは少ないとのこと。)も考えられます。
  • PEファンドは、通常non-compete agreementsを締結したがらないが、限定した事項であれば締結に応じる場合もあるようです。

9.06.2010

Malibu Creek State Park

引き続き、休日の過ごし方のご紹介。

本日は、Malibu Creek State Parkに、hikingに行ってきました。
同公園にMain Parkingがあるのですが、我々は、公園の反対側の
Agoura Hills市のCrags Rd. & Lookout Dr.に車を停め、出発しました。


道は、ずっとこのような感じで、小さな子供でも歩けますし、我々はStroller(Bugaboo)も押して行けました。但し、大きな砂利のあるところもあるので、車輪の小さなStrollerだと少し苦労するかもしれません。


あと、サイクリングをしている人もいました。平坦な道なので、これもかなり気持ち良さそうでした。


平坦な道ではあるのですが、今日の気候(快晴)もあり、日なたは、くらくらするくらいの直射日光が照りつけていたのですが、

このような木陰の道に入ると、風が冷たく、かなり快適でした。

















20分くらいでM*A*S*H Site(テレビプログラムM*A*S*Hの撮影場所)に到着します。大人だけであれば、本当にすぐだと思います。


ここに、ピクニックテーブルがあり、持って来たお弁当(Turkey Sandwichではなく、おにぎりと卵焼き等和食!)を食べ、休憩をした後、引き返し、途中、Malibu Lakeの方に寄り道をして、元の場所に戻りました。

家から40分くらいの場所にこのような自然溢れた場所があるのは、本当に貴重なことだと思うので、また来たいと思っています。

なお、ここに来る途中には、海を臨めるPacific Coast Hwy、断崖の脇を通るMalibu Canyon Roadと景色がいい道が続くので、ドライブに来るだけでも楽しめると思います。また、上記二つの道が交差する場所にあるPepperdine Universityの中も素晴らしい景色が広がっています(すみません、適当な写真がありません。冬休みの間でなければ、同大学に関係のない人でも立ち入り自由です。)

9.05.2010

Circus Vargas

本ブログの本筋ではありませんが、アメリカ文化のご紹介として。

この週末はLabor Day Weekendでアメリカでは3連休になるところがほとんどです。このLong Weekendを利用して、家族と一緒にサーカスを観に行ってきました。


Cirque du Soleil等のような洗練されたサーカスとは対極に位置するような、昔ながらのサーカスでしたが(空中ブランコとか、ピエロがコメディやったりとか。)、子供たちも含めかなり楽しめました。
びっくりしたのは、空中でのショーも命綱つけずにやりますし(普通サーカスってそうですかね?)、比較的小さなテントで間近で彼らの演技を観れるので、演技を純粋に楽しむというより、失敗して事故が起きないかというスリルを楽しんでいるというのが正直な感想かもしれません。もちろん、どのパフォーマーも完璧に演技していましたが。

特に、8歳の男の子が、バイクを小さい鉄の籠の中でぐるぐる回りながら乗り回すパフォーマンスは、2児の父としては、恐くて観ていられませんでした。。。。

因みに、右の女性もバイクで籠の中をぐるぐる回ります。しかも左の男性の乗っているバイクと同時に。。




ショーの最初にアメリカ国家を斉唱したり、ピエロのコメディも観客参加型で、選ばれた人たちも堂々と演技していたり、巨大な容器に入っているポップコーンを家族みんなで食べたり、観客も大盛り上がりで、アメリカナイズされた(といっても、半分くらいの観客はメキシコ系でした。)休日の過ごし方でした。

常にロサンゼルスで催行しているわけではないようですが、機会があればお勧めします。

9.03.2010

Directors' Unanimous Consent v. Minutes of Board of Directors

USのCorporationにおいて(少なくともCalifornia州とDelaware州において)、取締役会にて決議を行う場合、Directors' Unanimous Consentを取得する場合(Cal Corp. Code 307(b)、Del Corp Law 141(f) )と実際にBoard of Directors Meetingを開く場合の二通りがあります。

Directors' Unanimous Consentの場合は、実際に集まらなくてもいい反面、全員からConsentにサインをもらう必要があります。但しこのサインはファックスやPDFでもらうことで足ります。

Meetingを実際に開く場合には、議事録にはSecretaryのみがサインすればよいので、実際に開くのはスケジュール調整等大変ですが(ちなみに、一つの場所に集まる必要はなく、電話やビデオカンファレンスで参加することも可能です。)、記録を残す段階ではConsentより負担は少ないと言えます。

議論が必要であるか、どれだけサインがもらいやすいかによりどちらの方法を採るべきかを決める必要があると思われます。

因みに、日本ではどうかというと、Consentに相当するのは取締役会の書面決議かと思いますが、これは予め定款の定めが必要となります(会社法370条)。なお、実際の取締役会を開催した場合にも出席者全員の署名(記名捺印)が必要なので(会社法369条3項)、どちらの方法を採るにせよ、署名を集める手間があることになります。なお、日本では電磁的記録による方法で取締役会議事録を作成することも出来ますが、電子署名が必要となります(この点、PDF等で済むUSの運用とは異なりますね。民訴法の問題ですかね。)。この方法はまだあまり普及していないという理解です。

8.30.2010

LLC v. Corporation

改めてご挨拶

大変ご無沙汰してしまいました。
5月末に最後の投稿をして以降、6月はW杯TV観戦、7月は妻のCalifornia Bar受験の応援、8月は夏休みとその後山積した仕事の片付けをしていたらあっという間に3ヶ月が経過してしまいました。
継続的にブログをつけられている方の気力がいかにすごいかを、改めて痛感した3ヶ月間でした。
その間に読んだ雑誌や経験したこと等も少なからずありますので、徐々にまた復活できればと思います。また、妻の受験中に、私がCal Bar (カリフォルニア州の司法試験)を受験していた際のことも思い出しましたので、私の受験体験記も、機会を見つけて紹介できればと思っています。

日本企業の米国子会社の法形態について

さて、復帰一回目は、表題のとおり、比較的基本的な話題を提供したいと思います。
日本の企業が、初めて米国(例えば、カリフォルニア州)に進出することを決めた場合、米国に拠点を設けることになると思いますが、かかる拠点をどのような法形態にするべきかという問題が生じます。

法人vs支店

まず、法人の形態を採るか、支店の形態を採るかという問題があります。
もし、かかる米国の拠点が、情報を収集するだけだとか、契約の主体になったり、利益を出すことを想定していない様な場合には、設置が簡単な支店の形態を採ることもあり得るかと思います。
しかし、上記のような特殊の場合でない限り、一般的にはお勧めできません。まず、支店である以上同一法人となるので、米国でビジネスをしていく上で生じるリスクは全て日本の法人にも遡及することになります。また、利益を出した場合にも、米国において、日本企業を含むforeign corporationに対してBranch Profit Taxが課せられることになり、支店であることのメリットが生かせません。

LLC vs Corporation

ここからが本題ですが、米国子会社に法人という法形態を採るとしても、LLCかCorporationのどちらにするか、という問題があります。結論からいいますと、大多数の日本企業はCorporationを選択しています。

LLCを採用することの最大のメリットは、パススルー課税(構成員課税)にあります。これにより、LLCで生じた利益は、LLCの段階では課税されず、構成員(つまりCorporationでいう株主)の段階でのみ課税されることになります。
しかし、この形態を採ると、日本企業が構成員になる場合には、日本企業は米国において税務申告をしなければいけなくなります。この場合、損益は合算されるので日本でのビジネスについてまで米国の税務当局(IRS)に申告しなければいけなくなり、大抵の日本企業は,これを敬遠します。

また、Corporationの場合には、Corporationの段階でIncome Taxが課税され、その後利益が配当として株主に配当された段階でも益金(所得)として認識され法人税(所得税)が課されるのが原則(2段階課税)ですが、日本法上、外国子会社配当益金不算入制度が平成21年の税制改正で導入され、外国子会社から受ける配当の一部(95%)を益金に算入しないことが認められています(同制度導入以前も、間接税額控除制度がありました。)。つまり、外国子会社の配当のほとんどを、法人税の対象となる益金として参入しなくてよく、2段階で課税されることがなくなりました。因みに、LLCでも上記制度は適用されるようです。詳細はこちら

さらに、親子会社間配当については原則として、源泉地国において、10%の限度税率が課されますが、日米租税条約により、50%超の株式を保有するCorporationで一定の要件を満たす配当については、免税措置が執られるようになりました。日本企業の米国子会社の多くは、これに該当すると思われますが、因みに、10%~50%の保有割合の場合には、5%の源泉徴収が課されることになります。

上記のように、多くの場合、日本法上の外国子会社配当益金不参入制度と日米租税条約上の源泉徴収免除措置により、Corporationを選択する際の、LLCと比較した場合のデメリットが、ほぼなくなっており、これが、日本企業の米国子会社の法形態としては、圧倒的にCorporationが多い理由となっているようです。

ちなみに、S Corporationという法形態もありますが、これは株主がUS ResidentsかUS Citizens(個人)でなければならないので、日本企業が米国に拠点を置く際にはほぼ用いられません。

なお、Corporationの形態を採るとして、どこの州で設立するかという問題もあります。この点については稿を改めたいと思います。

5.23.2010

Classifying Individuals as Independent Contractors instead of Employees

業務従事者が実際にはEmployeeであるにも関わらず、Independent Contractor (業務請負人、IC)として扱われている場合の問題(日本でいう偽装請負)に関して、所内で行われたセミナーの概要についての投稿です。

1.運用の厳格化、最近の状況
2.運用上の差異、ICとして扱ってしまった場合のリスク
3.ICとEmployeeの区分基準
4.ICと契約するにあたって留意するべき点

1.運用の厳格化や最近の状況
NY Timesの記事やLos Angeles Daily Journalの記事(これは有料の記事のようです)等によると、オバマ政権は,今後10年で行政指導(IRSの調査等)や罰金の徴収等で$7 billionの税収増を見込んでいるとのことです。Government Accountability Office (GAO)のレポートによると、従業員としての実態がありながらICとして扱われているというケースは、最低でも150,000件はあると推測されていますし、IRSでも、かかる問題により1984年の時点で$1.6 billionの税収のロスがあると推測しているそうです。
現在、Fair Labor Standards Act (FLSA)に関しては、記録義務の厳格化や罰金の上限額の引き上げについての改正について議論がされています。各州でも同様の動向があるようです。

さらに、カリフォルニアにおいては数年前から、meal period/rest periodの規制違反に関して大規模なクラスアクションが多数提起されていましたが、現状は雇用者側に有利な状況にあるようで、雇用者側に有利な判決がでれば、原告側の代理人は新たな争点を探すことになり、この偽装請負に関する点は次の争点として浮上するかもしれません。

上記のような点から、この論点は現在注目を浴びつつある論点ということが出来ます。

2.運用上の差異、ICとして扱ってしまった場合のリスク
業務従事者がICであれば、
  • 雇用者はSocial Security TaxやMedicare Taxの負担を免れる。
  • Income tax withholding (state and federal)の義務を免れる。
  • Workers Compensation (労災補償)やUnemployment Insurance(失業保険)の保険加入を免れる。
  • Training等に費やす時間に対して、対価を支払わなくてよい。
  • 経費を支出した場合に当該額を償還しなくてよい。
  • Anti-discrimination laws, minimum wage and overtime laws, tortsなど、法的リスクが少ない。
  • プロジェクト毎に支払われる形態の契約であれば、コスト管理がしやすい。
  • 期間の面でも、柔軟性を保てる。
このような差異から、雇用者としてはできるだけICとして契約をしたいというインセンティブがあります。
しかし、書面上ICとして契約したとしても、実態はemployeeと認められる場合には、下記のようなリスクを負うことになります。
  • Workers Comp.やUnemployment Insuranceに加入していなかったことによる、所轄機関からのペナルティ(罰金等)
  • 実際に労災の請求が訴訟に発展した場合、Legal Costについて保険でカバーされなくなる。
  • 過去支払うべきだったUnemployment Insuranceの保険料の支払。
  • 従業員からの訴訟の提起(ICとして扱われたことによりbenefitが受けられなかった。)とそれに対する従業員への損害賠償
3.ICとEmployeeとの区分基準
かかる基準は、どのようなコンテクストで問題になるかにより異なります。また、基準がある場合でも、各事案によりどのような事実が存在するかが重要になってきます。

A. カリフォルニア
Labor Code 3357により、Employer/Employeeの関係があることが推定されます。従って、雇用者が反証しない限り、Employeeと認められてしまうことになります。反証する要素としては、Labor Code 2750.5に規定があり、
(a) That the individual has the right to control and discretion as to the manner of performance of the contract for services in that the result of the work and not the means by which it is accomplished is the primary factor bargained for.
(b) That the individual is customarily engaged in an independently established business.
(c) That the individual's independent contractor status is bona fide and not a subterfuge to avoid employee status. A bona fide independent contractor status is further evidenced by the presence of cumulative factors such as substantial investment other than personal services in the business, holding out to be in business for oneself, bargaining for a contract to complete a specific project for compensation by project rather than by time, control over the time and place the work is performed, supplying the tools or instrumentalities used in the work other than tools and instrumentalities normally and customarily provided by employees, hiring employees, performing work that is not ordinarily in the course of the principal's work, performing work that requires a particular skill, holding a license pursuant to the Business and Professions Code, the intent by the parties that the work relationship is of an independent contractor status, or that the relationship is not severable or terminable at will by the principal but gives rise to an action for breach of contract.(太字は筆者)
等の要素により総合的に決定されます。

B. Economic Reality Test
Federal Lawが問題となる場合には、Economic Reality Testが適用されます。
(a) the degree of control exercised by the alleged employer; 
(b)  the extent of the relative investments of the [alleged] employee and employer;  
(c) the degree to which the "employee's" opportunity for profit and loss is determined by the "employer"; 
(d) the skill and initiative required in performing the job; and  
(e) the permanency of the relationship.

C. IRS
さらに、IRSは、下記のようなテストを適用します。
Facts that provide evidence of the degree of control and independence fall into three categories:  
(a) Behavioral: Does the company control or have the right to control what the worker does and how the worker does his or her job? 
(b) Financial: Are the business aspects of the worker’s job controlled by the payer? (these include things like how worker is paid, whether expenses are reimbursed, who provides tools/supplies, etc.)  
(c) Type of Relationship: Are there written contracts or employee type benefits (i.e. pension plan, insurance, vacation pay, etc.)? Will the relationship continue and is the work performed a key aspect of the business? 
上記テストには、Reasonable BasisというSafe Harbor Defenseがあります。

D.その他、Unemployment and Workers' Comp. Testというテストもあります。

4.ICと契約するにあたって留意するべき点
以上の区分基準から、ある業務に関して、作業従事者をICとして契約する場合に留意するべき点としては、下記のような要素があげられます。
  • ICであることを明記する。
  • ICを支配下に置いていると認められる規定は避ける。
  • 指示を出すのではなく、出来る限り"Recommend"するに留める。
  • 作業や成果物に対して対価を支払い、労働時間に対して対価を支払わない。
  • 作業に従事する作業員に関する責任(各種保険、税金等)は、ICが負う。
  • Employee Benefitを放棄する旨の規定(万が一、Employee Relationshipが認められた場合)
  • 期間は、プロジェクト毎または一定期間("at will"とはしない。)
  • 作業に必要な道具、設備、費用はICが負担する。
と言った点に留意し、また、契約に規定するだけでなく、契約の規定に従って運用をすること(場合によっては、適切な運用がなされているかの監査も行う)が肝要です。

5.17.2010

Product Liability 101

所内で行われたセミナーで、印象的だった点を記します。前提として、Product Liabilityが問題となるケースにおいては、多数の消費者が大企業を訴えるという構造になるのが通常で、当事務所は被告(defendant、企業側)の代理しています。

1.Product Liabilityのようなケースは、訴えられる企業にとって、相手は原告代理人であって、多数の消費者ではないこと。しかも、その原告代理人はSophisticateされていて、かなり手強いこと。
  • 大体のケースにおいては、原告代理人が率先して、原告に参加するように募り訴訟の遂行もリードすることになるようです。
  • 原告代理人の方がいいレストランやいいワインを知っていることが多い等それだけ成功している弁護士が多いそうです(笑)。
2.1.の点と関わりますが、原告代理人は被告の嫌がることであれば何でも行う(Press Releaseや多大な負担のあるDiscovery Request等)ことから、被告にとっても早期に代理人を選任して、原告代理人の活動に制限をかける必要があること。

3.代理人の選任に当たっては、訴えられた管轄に所属する弁護士(Regional Counsels)と共に(複数の管轄地で訴えられることが通常)、それらの弁護士をまとめるNational Counselを選任することも検討すること。
  • 特に、大都市ではない管轄地の場合、Product Liabilityのようなケースを扱える様な弁護士は数える程しかいないことが多いので、選任は早ければ早い程よいことになります。
  • National Counselの選任の要否は、In-house Counselで対応できるかどうかですが、National Counselの役割としては、全体の訴訟遂行方針を策定し、Discoveryの際の文書の管理等、さらにPleadingsやBriefsの統一(管轄地毎に矛盾が生じないように)など、膨大な作業量を迅速にこなさなければいことに留意が必要です。結局は、In-houseを含めた法務部の規模と当該訴訟の規模の比較の問題かと思われます。
4.上記以外に初動としてするべきことは、
  • 文書の速やかな保管(e-Discoveryの稿において述べたとおり)
  • 会社(被告)側証人(候補)の選定、及び、
  • 加入している保険条項の検討(多くの場合、保険会社への通知が必要)
が、挙げられます。

5.Multi-District Litigation (MDLs)
Trialの前段階において、複数の管轄地で提起された訴訟(Federal Casesについて。州によっては州内でMDLを認めている州もある。)について、訴訟を併合する手続きがあります。どんな手続きでもMDLを採用した方がよいというわけではなく、提起された訴訟の数や場所、事件の性質(ある一つの州だと勝つ可能性が高い等)を鑑みて、採用されることになります。どこの管轄に併合されるかについては、証拠収集(文書、証人等)のしやすさ、Judgeの経験,事件の場所等が勘案されます。因に、Judgeの経験という観点からすると、Eastern district of Louisianaの裁判所はMDLの訴訟遂行地として選ばれることが多いそうです。
今回のトヨタの訴訟など大規模な訴訟は、MDLによる他ないと思われますが、管轄地が二つや三つくらいであれば、採用するべきではない場合もあるかと思われます。

6.Company Witness
これは、Product Liabilityのケースに限った話ではありませんが、被告側証人というのは有利な証言をしてくれると思い込み、軽視しがちです。しかし、裁判において、被告側証人の証言のみによって勝つことはないが、同証言のみによって負けることはある(もちろん証人本人は会社側に有利になるよう証言しているつもりです。)、というのを肝に銘じておかなければいけないそうです。

表題のセミナーは第二回もあるようなので、その概要については稿を改めたいと思います。

5.15.2010

Presentation Skill

私の所属している事務所内でアソシエイト向けにPresentation Skillの向上のためのセミナーがありました。主に弁護士がパートナーや依頼者にPresentationをすることを想定しているため、1対1の場面を想定したセッションでした。

そもそも、Presentation Skillに関するセミナーを日本の法律事務所で行うというのは滅多にないと思います。日本企業の内部はどうかは知りませんが、一般にアメリカ人がプレゼン上手といわれているのは、日頃からこのようなセミナーを開催する等Presentation Skillを磨くことに注力しているからだということなのだと思います。(そういえば、裁判員制度導入の際に弁護士会の企画で、如何に裁判員にプレゼンをするかというセミナーはあったと思いますが、その際の講師もアメリカのTrial Lawyers (法廷にたつことを専門としている弁護士)だったようですね。)。

このセミナーで学んだ点をいくつか記します。

1.まず、人には、 思いついたことをばんばん喋りながら頭を整理して行く人や黙って人の話を聞き、その他の情報をじっくり分析しながら論理を組み立てて行く人等、様々な性格があるので、話す相手がどのような性格があるのかを分析すること。例えば、前者の人であれば、プレゼンの際には、本当に簡潔に重要な点のみをハキハキと述べることが重要だし、後者の人であれば、相手が考える時間を与えるためにゆっくり、また、トピックの切れ目には少し長めに間を持たせることが重要だというような話がありました。

2.また、話す際の姿勢ですが、

  • 常にアイコンタクトをし、
  • 背筋を伸ばして椅子の前半分を使って座る(椅子の背にもたれかかってもいけないし、机に寄りかかってもいけない)、
  • 両足は床に着けておく(離すと体が動いたりして、相手が自分の話に集中できなくなるから)、
  • 手は前で組まず(相手との間に壁ができてしまう)、自由に動かす(ジェスチャーを大きく)為に、肘をテーブルにつけない、
  • 簡単で、ぱっと見て目に入るメモを準備する、
  • メモに目を落としている間には絶対に話をしない(これにより相手もそれまでに聞いたことを消化できる)、

等の点を挙げていました。アイコンタクトや大振りなジェスチャー等は、日本の社会においては、また別のルールがあると思いますが、少なくともアメリカ人を相手に話をする場合には、留意するべき点ではないかと思います。

私も、実際にセミナー中に練習したところ、自分では姿勢を正して座っているつもりでも、机に寄りかかっている点を指摘されたのと(それにより手が自由に動かなくなる。)、手でペン等をいじる癖があるようで、話をしている間はペンを届かないところに置いておくという点を指摘され、目から鱗でした。

5.06.2010

Earn-Out Provisions

本稿では、昨年末のケースを取り上げ、Earn-Out Provisionsを契約書中に規定する際に留意するべき点をお伝えしたいと思います。

Earn-Out Provisionsとは、M&A取引等の際に、クロージング時に一括して買収価格を支払って取引が完了するのではなく、将来の業績に応じて契約内容を調整することを約する規定です。よくある例としては、クロージング時に○ドル支払い、その後○年間にわたり、将来の業績に応じて○○の利益の○%を支払うというような内容がこれに該当します。

Airbourne Health, Inc. and Weil, Gotshal & Manges LLP v. Squid Soap, LP (November 23, 2009)においては、Airbourne(買主)がSquid Soap(売主)が開発したproductsに関する資産(「本件資産」)を購入する際の資産譲渡契約(Asset Purchase Agreement、「本件契約」) 中のEarn-Out Provisionが問題となりました。本件契約においては、Airbourneがマーケティング費用としてUSD 1 millionを支出せず、最初の12ヶ月でnet salesがUSD 5 millionに達しなかった場合には、Airbourneは本件資産を戻せるという条項が設けられていました。本件契約の締結後まもなく、Airbourneの経営状態が悪化し、Airbourneは上記マーケティング費用を支出せず、本件資産を返却することで経営を正常化しようとしたのですが、Squid Soapは返却に応じなかったので訴訟に持ち込まれました。

裁判所は、本件契約中にAirbourneのmarketing programの遂行に関する表明保証条項等の文言がないことを主な理由として、Squid Soapの主張には理由がない、従って、本件契約の条項に従って、本件資産の返却に応じなければ行けない旨判示しました。

判断の帰結は妥当なものであると私も思いますが、Earn-Out Provisionは、そもそもが将来起こることについての規定なので、規定の仕方に慎重を要するということが本事案の教訓かと思います。本件を例にとると、売主としては、締結時の買主の経営状態についての表明保証、及び将来どのような方法でmarketingを行うか等の詳細なcovenants規定を設けて、買主の義務を明確化する必要があったのではないかと思います。
また、下記参考文献によると、買主側にとっても、non reliance provisions(契約書に規定されていること以外には依拠できないこと)を入れていれば、上記のような紛争は生じなかったであろう旨述べられています。

参考文献:Michael Kendall  “Delaware Case Highlights Common Pitfalls to Avoid With Earn-Out Provisions

4.29.2010

Bankruptcy Sale (363 sale)

今年に入って表題のBankruptcy Sale に関するdealを目にする数が減ってきましたが、景気の動向に関わらず、倒産した会社から資産を譲り受ける場合はあると思います。そこで、Chapter 11下の会社(以下「債務者」、a debtor-in-possessionの意)から、連邦破産法363条に基づいて、資産を譲り受ける場合の手続きと効果について、概観します。

I. 手続き

1.初回入札

まず、購入予定者は、債務者との間で資産譲渡契約(Asset Purchase Agreement)を締結します。この契約は後述のように破産裁判所の許可が必要ですが、もし、破産裁判所の許可が得られない場合には、どちらかの当事者がこの契約を終了させることができる様に構成するのが通常です。この購入予定者は、当該資産の底値を示すことから「おとり入札者(stalking horse bidder)」とも呼ばれます。

なお、この購入予定者は最初の入札の際に必要な時間と費用をかけていることから、この点を保護するため、購入予定者は、その後の競売手続において、より高額を提示する応札者がいた場合のための契約保護条項(通常、費用の償還や購入価格の3%の違約金)を設定するのが通常です。

2.売却通知/競売手続

債務者は、全債権者に売却を承認してもらうため、20日間の意見聴取期間を設けます。その後、債権者からかかる売却に関し異議がでた場合(又は異議がでない場合であっても)、破産裁判所は、競売手続を踏むことを求めることがあります。より高い、より良い提示がなされる可能性がある場合にはかかる手続きを踏むことが多いと思われます。

3.売却審査手続

競売手続を終えた後、破産裁判所は落札者の入札条件及びそれに付随する譲渡契約を勘案し、落札者への売却を許可するかについて審査を行います。同時にかかる売却に関し、異議があった場合の異議の内容についても審査します。その後売却許可が出された場合には、かかる許可は、裁判所が別途指示しない限り、10日間その効力が維持されます。

4.クロージング

このような売却手続は、多くの場合、裁判所からの売却許可が下りたら直ちにクロージングが行われますが、裁判所が効力発生までに最大10日間の期間を設定した場合には、当該期間が経過したときに、クロージングが行われることになります。

II. 効果

債務者は、当該資産を担保権、更生債権、その他負担が除去された状態で売却することができます。

III. その他留意点

上記手続きを経ずとも、通常の業務過程においては、債務者は、裁判所の許可なく資産を売却することができます。通常の業務過程には、通常業務において生じる在庫の売却などが含まれます。

4.28.2010

Foreign Corrupt Practices Act (FCPA)

昨年あたりから議論の俎上にのることが多くなったFCPAに関しての投稿です。

そもそも日本企業にFCPAの適用があるのかというところが最初に問題となりますが、この点についての記事Daniel Margolis and James Wheaton "Non-U.S. Companies May Also Be Subject to the FCPA"を見つけました。なお、ここで日本企業とは日本で設立された会社を指すことにします。また、適用される可能性がある場合の対策については、稿を改めたいと思います.


この記事によりますと、FCPAが日本企業に適用される場合として以下の4つの場面をあげています。
1.日本企業の米国子会社及び日本企業が、当該日本企業又はいずれかの子会社において雇用している米国人(U.S. Nationals)
2.米国のSecurities Exchange Act of 1934 Section 12に基づき証券を登録している者またはSection 15(d)に基づき届け出をしている者
3.日本企業の米国子会社が問題となる外国の企業とJoint Ventureを組成していたり、当該外国のAgentを使用している場合。
4.米国のTerritory内で、Anti-Bribery Provisionに抵触するような行為を行った場合(例えば、米国内で、外国の公務員等に賄賂を供与する場合)

1.から3.については、気をつけなければいけない場合が割とはっきりしていると思いますが、4.については注意が必要かと思われます。
米国に子会社がない場合や米国と関係ないビジネスをしているつもりであっても、米国内において当該行為が行われた場合(例えば、米国内のBanking Networkを使用する場合)にはDomestic Concernがあるとされて、FCPAに抵触することになります。実際にある日本企業の従業員が拘束された事例もありますので、注意が必要です。
カルテル(談合)等の事案にも当てはまることですが、米国においてこの手の経済犯罪では、企業に対する罰金だけでなく、実際に罪を犯した従業員が拘束される事例が多々あります。この点は、日本での運用と著しく異なる点だと思うので、留意が必要です。

また、米国内で行うことを避けたからといっても、日本にも同様の禁止規定があります(不正競争防止法18条。但し、FCPAのように積極的な運用がされているかについては、手元に資料がないので、不明です。)。また、英国でも最近より厳しい規制が制定されたようです(Bribery Act 2010)。さらに、当然のことながら贈賄等の対象となる公務員が所属する国にも禁止規定がある場合が多いと思います(適切な運用がなされているかは別問題としても。)。

新興国や発展途上国でのビジネスに関与されることが多い企業におかれては、益々当地の公務員等に対する便益を提供することをビジネスの獲得手段として使うことは難しくなって来たといえ、実際にビジネスに携わる部門の方々へのこの点の周知徹底が重要になってくると思われます。

4.18.2010

Data Security and Privacy Issues in Labor and Employment

アメリカにおいて、従業員を雇用している企業であればほぼ全ての企業が、dataやprivacyのsecurityに関して対策を講じる必要があります。
Data Security and Privacy lawsに関して、日本では個人情報保護法があり、EUでも個人情報保護に関して強い規制(directive)があると聞いていますが、アメリカでは上記のような網羅的な法律はありません。実際にEUの規制上、EUの個人情報をアメリカに移すのは難しいという話も聞いたことがあります。また、日本での個人情報の保護意識の高まりはご存知のことと思います(個人的には少し行き過ぎのような気がしますが。)。

上記のような背景事情から、アメリカでのData Security and Privacy Issuesの規制は緩いものと思いがちかもしれませんが、特にここ数年、アメリカでもdataやpersonal informationのsecurityに関心が集まって来ており、留意する必要があります。

なお、セミナーでは雇用関係の側面から、本件問題を取り上げていましたので、この投稿でもかかる観点からの報告になります。

I. 制定法の概観

アメリカでは、Health Care Providers等を対象としたThe Health Insurance Portability and Accountability Act of 1996 (HIPAA)や金融機関を対象としたGramm-Leach-Bliley Act of 1999 (GLBA)など、特定の業種に対して制定されている法律があるので、これらの法律の対象となる業種の企業は、それぞれの法律に従う必要があります。

上記以外の業種の企業であっても、従業員を雇用している企業であればほぼ全ての企業が、dataやprivacyのsecurityに関して対策を講じる必要があると思います。 

なぜなら、アメリカの45州では、情報の漏洩があった場合にはかかる事実を開示する義務を企業に課しており(例えば、カリフォルニア州では、CAL. CIV. CODE § 1798.82)、かかる義務に基づき開示を行った企業に対して訴訟が提起される例が急増しているからです。

また、この開示を端緒として、Federal Trade Commission(FTC)のInvestigation(捜査)が行われることもあります(See Section 5 of FTC Act)

II. 訴訟の原因

漏洩の原因の中で20%以上を占めるのが従業員によるものだということです(さらにそのうち3分の2は従業員の故意によるもの)。

そして、上記で触れた訴訟において問われるのは、

• 情報を漏洩した従業員を雇用した責任(negligent hiring and retention)

• 情報安全保管義務違反、

• その他FCRA, FCFAA違反等法定の義務違反

• 漏洩した事実の開示による株価下落の損害賠償請求又は derivative cases(代表訴訟)

さらに、まだ実際に原告に損害が発生していない段階でも、漏洩が今後起こらないように監視を求めることを要求する場合もあり、その場合にかかるコストは事前に行う場合に比して、高額になる場合もあるようです。

III. 対策

上記のようなリスクを出来る限り回避するために、以下のような対策が考えられます。

• どの情報がSensitive Dataなのかを知り、かかるDataの所在(どこからどこに情報が流れて行くかということも含みます。)を把握する。

• 誰にアクセス権限があるのかを決定し、さらにその権限者の使用目的も限定する。

• さらに、詳細な管理の方法をマニュアルの形にする(また、そのマニュアルを効率的に運用させる。)。

• 情報を社外に出す場合の制限をかける。

• 情報を処分する際のルール(FACTA and the FTC disposal rule参照)を策定する。

• 従業員への研修(特に、漏洩が起きてしまったときの対応)を定期的に行い、理解を徹底させる。

• また、最近では、Cyber risk, privacy riskに特化した保険があるので、かかる保険に加入する。

特に、雇用関係では、

• 採用時のBackground Checkを行う際(各州法によって、要件が異なりますが、希望者の明確な同意を得ておく事が望ましい。)、

• 従業員との雇用関係が終了する際、

には慎重にSensitive Informationを取り扱う必要があります。

4.08.2010

Arbitration Clause - ICC v. AAA (v. JCAA) -

契約書を作成している際に、Arbitration Clauseを設けるか、設けるとしてもどの機関を利用するのか、については問題となることがあります。

日本の中だけで完結する契約においては、仲裁合意条項を設けるのは少ないと理解していますが、アメリカでは割と多く見受けられます。これは、アメリカでは訴訟手続きにJury System(陪審制)があることが大きな理由であると理解しています。

まず、紛争解決手段として仲裁を選択する場合、仲裁合意条項を記載する必要がありますが、同条項について、どの範囲の紛争について当事者が仲裁による解決の意思があるのかを明確にさせる必要があります(See Kuhn Constr, Co. v. Diamond State Port Corp, No. 124, 2009 (Del. Supr. Mar. 8, 2010)。
また、雇用契約の場合等一定の場合には、仲裁合意の仕方によっては当該条項が無効となる場合(例えば、カリフォルニア州)もありますので、書き方に留意する必要があります。

紛争が起きた場合に、仲裁により解決することを決めた場合、次にどの機関を利用するかが問題となります(アドホック仲裁と言って、機関を利用せずに仲裁を行うという手段もあります。)。仲裁機関としてよく見られるのが、American Arbitration Association ("AAA")やInternational Chamber of Commerce ("ICC")です。

AAAは、New York Cityに本部があり、International Center for Dispute Resolution (ICDR)という機関が管理機関となります。ICCは、Parisに本部があり、Court of Arbitrationという機関が管理機関となります。この管理機関は、書面のやり取りや仲裁人の選出等に関与するのみで、実際に仲裁判断を行う仲裁裁判所(arbitration tribunal)とは異なります。ただ、ICCのCourt of Arbitrationの方がAAAのICDRより関与の度合いは強く、手続き面でTerms of Reference(当事者の主張の整理や争点の整理を行う書面)を作成したり、仲裁裁判所の作成する仲裁判断を精査したりします。
どちらが有利か、どちらの機関を選択するべきかは、一概に決められるものではありませんが、一般的な評判としては、ICCの方が、仲裁人として登録されている人の評判や事務手続きの効率が良いとされる反面、コストもAAAより高いとされる傾向にあるそうです。その他、準拠法がどこの法律か、当事者のdomicile、契約の履行地その他契約上の属地的な要素も、仲裁機関の選択に当たっての考慮要素ではないかと思われます。

その他にも、南カリフォルニアを中心とするJAMSや、日本商事仲裁協会("JCAA")など,各地域にたくさんの仲裁機関があります。
JCAAについてですが、手元に正確な数字はありませんが、ICC, AAAに比べると圧倒的に扱う事件数が少ないと理解しています。なお、私はJCAAを仲裁機関とした仲裁事件に関与したことがありましたが、(日本の裁判手続きと比較して)予想外に時間とコスト(仲裁人にも相当の費用を支払う必要があります。)がかかり、その件に関しては、裁判手続きではなく仲裁手続きを採用するメリットは少ないように思いました。

3.29.2010

Marmalade Cafe/Butter Consumption

本日は、Sherman Oaksにある表題のレストランで、Green Business関連のアメリカ人3名(ビジネスコンサルタントとベンチャー企業経営者とハイテク製品を扱っている企業のBusiness Development部門の方)と、ビジネスランチでした。

前にお会いしたEV(電気自動車)事業のベンチャーを経営している人もそうだったのですが、Thousand Oaks方面でClean Tech関連のビジネスをしている人が多く、ダウンタウン勤務の僕との中間地点ということで、Sherman Oaksが選ばれたのです。僕は、Sherman Oaksは初めてでしたが、治安の良さそうで歩いている人や走っている車からしても、裕福そうな街であることが窺えました(ただ、朝夕の渋滞はひどいと思います。)。

ミーティングは、それぞれが自分のしていることを話し合い、今後うまくビジネスが繋がっていけばいいね、みたいな感じで終わったのですが、お伝えしたかったのは、出席者の一人(ビジネスコンサルタントの方)のバター消費量。。。。Green Businessに携わっているからか、Saladだけを頼んで(といっても、こちらのランチで出てくるSaladはかなりの分量ですが)、Health-consciousぶりを発揮しているかと思いきや、最初に出されるパンに、ひたすらバターを塗り続け、パン二つを食べるのに、小さめではあるものの、使用したバターのパックは、何と8個。。。。思わず、全部数えてしまいました。
その方の体格については、ご想像のとおりです。。。

ビジネスコンサルタントの方だけに、自分をアピールする方法もアメリカ人らしく、堂々たるものだったのですが、カロリー摂取量も目を見張るものがあり、アメリカ人のバイタリティを見せつけられたランチでした。。。

ちなみに、僕が注文したのは、ランチ用のEgg Benedictでした。とても美味しかったのですが、残念ながら少し残してしまいました。

3.28.2010

Compliance Programs

引き続き同じ雑誌の下記の記事について。

記事は(こちらはログインしなければ原典にはあたれないようです。)、独禁法に焦点を当てていますが、一般的なCompliance Programにも該当する部分についてご紹介したいと思います(US Sentencing Guidelines参照)。

I. Setting Up Standards and Procedures
Compliance manualの作成。通常業務に従事している従業員が短時間で読んで理解できるようできるだけ短く簡潔に分かり易く書くことが望ましい。

II. Assignments of Responsibility
取締役会の監督(Programの内容運用についてレポートを受け取り、適切な改善策を講じる)、Compliance Officer(又はTeam)の選任。
但しかかる選任に当たり、違法行為、Compliance Programに抵触する行為を犯した者ではないことの調査を行うこと。

IV. Communication of Standards and Procedures
Compliance Manualの配布だけでなく、研修を継続的に行い、対象者の理解を深める努力を行うこと。特に、どのような場面(行為)に遭遇した場合に、どのようなタイミングで報告を行うかは重要な点。

V. Certain Measures to Ensure Compliance
Compliance Officer (Team)による監督、定期的なManualの評価、さらにはHotline(通報制度)の確立、適切な運用。

VI. Consistent Enforcement
これは、どの従業員に対しても平等に運用し、一定の対応をすること。

VII. Follow-up on Detected Offences
適切、迅速な懲罰手続きの履践、内部調査の履行、それに伴う関連文書の保存(これは前回同様e-Discoveryのlegal hold noticeや関連監督機関(独禁法の場合のDOJ等)に対する報告等の関連で重要です。)。

3.27.2010

Cloud Computing Agreements

下記の記事を見つけたのでご紹介します。
Michael P. Bennett "Negotiating Cloud Computing Agreements", The Corporate Counselor (March 11, 2010)
Stuart D. Levi, Kelly C. Riedel "Cloud Computing ~Understanding the Business and Legal Issues~", Practical Law Journal (March 2010 Vol. 2 Issue 2)

最近増えて来たクラウドコンピューティング契約(Cloud Computing Agreements)を作成する際の留意点について書かれた記事です。
私の備忘録として、以下記載します。


  • 基本的に、Outsourcing Agreementsをベースに作成されたものが多いので、通常のOutsourcing Agreementsで想定される事項とどこが異なるかを意識すること。
  • Cloud Customerとしては避けるべき条項。
    • 紛争が生じた際に、VendorがCustomerのデータを留置できる条項。
    • データロス等に関する責任免除条項(関連して、バックアップ手順やデータリカバリーの手順についての明記。)。さらに、そもそもかかるリスクに対処するため、複数のCloud Vendorsを起用することも考えられます。
    • その他損害賠償の限度額が支払額が上限として設定されている場合(クラウドでは、初期費用が継続的に支払う額が低く設定されていることが多いことから、総額が低くなる傾向があります。)
    • 短期間の保証条項(Warranties)。
    • Force Majeure条項(不可抗力)。
  • Cloud Customerとして加えるべき条項。
    • Dataの移行手続(その裏返しとしての、終了する際の移行手続)。
    • Vendorが使用するハードウェア、OS、その他ソフトウェアの仕様の特定(これに対する一定の対価を支払うことになるため。)
    • 当該サービスを受けるために必要なソフトウェアのライセンスを受けることを明記。
    • サービス開始後のVendorのシステム等の閲覧、監査権(これは、先のpostでふれた、e-Discoveryにおけるlegal hold noticeとの関わりでも重要になってきます。)
  • US Export laws, Graham-Leach-Bliley Act (金融機関が対象)、EU Privacy laws (EU directive 95/46/EC)の検討。どこの法律が適用されるのか(データセンター、サーバーのロケーション等による)は重要な考慮要素。
  • サービスレベル(セキュリティ関係も含む。)については、Vendor側にとっては修正することが困難な場合又はフィーが格段に高くなることが多いようです(実際上、多くのCustomerに対して同じレベルのサービスを提供することになるため。)。ただ、Customerとしては、サービスレベルを特定し、それを下回るパフォーマンスしか提供されない場合の対処規定(違約金や解除事由)を定めておく必要がある。
  • Cloud Vendorは、Customerのdata を定量分析等に使用する必要があることもあり、当該契約のみならず、自社のポリシーもチェックする必要もでてきます。

3.23.2010

Earth Hour 2010

http://www.earthhour.org/TakeAction.aspx

上記のようなイベントのお知らせが回ってきました。
このサイトを見る限り立派なイベントのようです(しかし、ビルの電気を消す時間(1時間)をもう少し延ばしてもいい気が。。。)。

実際こちらで働いていると、驚くほど、PCやら電気やらをつけっぱなしにして帰る人が多く見られます。そのため、勤務先のローファームでは、オフィスの電気は一定時間誰もいないと自動的に消えたり、PCも午後10時で自動的にシャットダウンする(それ以降使う人は、シャットダウンする前に使用できるよう設定できます。)ような設定になっていますが、デスクランプとかは消えないまま放置されています。
また、化粧室でも手を洗うところにペーパータオルがあるのはもちろん、その後化粧室から出るドアのところにもペーパータオルが置いてあるのです(ドアの取っ手をそのペーパーで掴んで開けるため。)。

上記のような状況だからこそ、このようなイベントが必要なのかもしれません。
アメリカでも最近はエコ(go green)は流行していますが、まだまだ日本(にいる人たちの感覚)に追い付くには時間がかかるような気がしています。

3.21.2010

Business Seminar in Newport Beach

今回は、法律ネタではありませんが、私の大学の同窓会主催のビジネスセミナーに出席しましたので、そこで印象に残ったことを徒然に記します。

スピーカーの方は、30年日本の一流企業のアメリカ現地法人の社長としてご活躍され、現在もロサンゼルスにて有名な日系の慈善事業団体の理事を通じて社会貢献をしておられる方です。

大変貴重なお話を伺うことができましたので、印象に残った点をいくつか書き留めます。

1.日系企業の技術
日本の経済が戦後奇跡的な回復を遂げ、世界の1、2を争う規模になるまでになったのは、日本の企業(特に製造業等)の有する技術が優れていたということも一つの理由になったかと思いますが、これは、何も戦後一から築き上げたものばかりではなく、戦前から(軍や政府主導という部分も多かったようですが)脈々と受け継がれたものも多いということを知りました。
もちろん、戦後すぐには粗悪品が流通していたということも事実だとおもいます(今とは反対に、戦後すぐは"Made in Japan"と言えば劣悪品というイメージがあったようです。)。

2.GHQの貢献
スピーカーの方によりますと、マッカーサーは日本の経済は自律的な回復をしていかなければならないという信念があったようで、例えば、戦後間もなくフォードが戦前から有していた自動車の組み立て工場を再開しようと、人員を派遣しようとしたところ、上記のような信念のもとかかる人員に対するビザを発給しなかったということがあったそうです。

3.アメリカでの成功のカギ
A.宣伝の重要性
具体的には、Ad Agencyを起用するなど米国流にMarketing, Sales活動を展開していくべき、例え技術を持っていたとしても、この点をおろそかにして成功することはないことを強調しておられました。特に、今般のトヨタのような逆風下の環境においてこそ、宣伝への投資というのは重要であることを述べられていました。

B.アメリカ人にとって、日本人はミステリアスであることを認識すること
日本人も、アメリカに来た当初はアメリカ人の考え方等で認識が異なり、面食らうことが多いと思いますが、日本人のアメリカ人に対するイメージ以上に、アメリカ人は日本人がどういう事を考えているのか(一個人がどういう人間なのか)が分からないのだということを認識する必要があるとのことでした。そして、この点を打破するため、社内旅行をしたり、気軽に話し合える組織を設けたりと色々腐心されたそうです。
もちろん、自分がどのような人間かをアメリカ人にわかってもらうのは、言葉の壁もあり、一朝一夕にはいかないと思います。その意味で、2年や3年程度で配置換えになってしまうような駐在制度を持つ企業(や領事館)には批判的でした。
このことは、アメリカ人(や社会)が日本以上に、個人と個人のつながりを大事にするのだと言うことが前提のアドバイスだと感じました。

C.アメリカ人の情報の取り扱い方
アメリカ人は、情報を資産と考え、より慎重に扱う傾向があるとのことでした。あるアメリカ人の部下に社内の機密情報を提供し、その対応について相談したそうです。スピーカーの方は、同僚と相談することを暗に期待していたようですが、そのアメリカ人はそのような貴重な情報をむやみに共有することはないようです。

D.雇用条件
アメリカ人の中にも、終身雇用(待遇が若干悪くなっても)を望む人は多いそうです。
ただし、人をクビにする際は、訴訟リスクに対応するため、severance payを多くするなど、不満を持たれないように行うのが肝要だということでした。

4.まとめ
歴史的な経緯について勉強になりましたし、アメリカのローファームで、アメリカ人に混じって働いていく中で、日頃何となく思っていたことが、うまく整理され、今後の働き方にも多いに参考になるセミナーでした。

3.20.2010

State Tax

State Taxに関する所内のセミナーの概要です。

State Taxの代表例としてはSales and Use Taxが挙げられ、Sales Taxとは、売主が買主から徴収した上で支払う税金で、Use Taxとは、売主が徴収しなかった場合に、買主が報告・支払うものです。当然のことながら、各州で税制が異なり、どの州でいくら支払うのかにより、トータルで支払う州税が異なってきます。このコンセプトは、日本法に親しんでいる方、日系企業の方(米国のビジネスに長年精通している方はともかく)にはなじみのない概念であるかと思い、本ブログで取り上げようと思います。

I.Substantial Nexus
まず、Sales Taxが課される前提として、被課税者がその週にSubstantial Nexusがある事が必要となります(minimum contactだけでは足りない。)。具体的には、Physical Presenseがその州にある事が必要となります。 (Quill, US S. Ct. 1992)

II. 基本的な枠組み。
I. が満たされた場合、次に各州の州税の算出方法が問題となりますが、

州税=[Tax Base] × [Apportionment Factor] × [Tax Rate]

という算式に表すことが出来ます。

[Tax Base]とは、一般にNet Income, Gross Receipts, Book Income等が用いられますが、かかる概念は、週によって異なる場合があるようです。
[Apportionment Factor]とは、ある取引の要素が複数の週にまたがる場合に、かかる取引によって生じるTax Baseをどのように配分するかという事に用いられる要素です。例えば、Sale of Goodsの場合には、Sales が発生したのは仕向地とするか荷渡地とするか、どのような割合にするかによって、決まる事になります。この配分方法も各州によって異なりますし、解釈の余地がある場合もあります。
[Tax Rate]とは、各州の税率ですが、各州によって税率が異なります。

上記のように、各要素が各州によって異なる場合があることから、税率の低い週に、Apportionmentの割合を高める事により、節税が可能になります。また、Apportionmentの算出方法自体も各州によって異なる事から、算出方法の運用、解釈次第では、トータルの割合を100%未満にする事も節税対策となります(逆に、100%以上の配分になってしまっている例もあるようです。)。

III. Combined Filings
また、州によっては、関連会社のSales TaxをCombine (連結)して納税する事ができます。その場合、[Apportionment Factor]は関連会社を総合してみて決まる事になります。これは、ある一つの州の州税の徴収方法の問題なので、[Tax Rate]は同じですが、各関連会社の[Apportionment Factor]が異なりうる為に、各社がそれぞれTaxを支払う場合と、まとめて支払う場合とで、総額が異なる場面が出て来るので、各場面に応じて、どちらが有利かを検討する必要があります。

IV. Exemptions
さらに、州によっては、下記のような物に対しては非課税になる事にも留意する必要があります。
1. Intangibles
2. Improvements to realty
3. Manufacturing equipment
4. Services vs. tangible property
5. Bad debt

3.18.2010

E-Discovery - Revisited Zubulake

2010年1月15日に、e-Discoveryに関する判決(オピニオン)が出ました。The Pension Committee of the University of Montreal Pension Plan et al., v. Banc of America Securities, LLC, et al., 2010WL184312 (S.D.N.Y.)

アメリカに拠点を有する日本企業にとって、e-Discovery対策というのは、大変重要であるにもかかわらず、対応できていないことも多々あると聞いていますので、ここでも取り上げさせて頂きました。

そもそも、米国のDiscovery制度は、日本の司法制度にはない制度であり、その重要性がわかりにくいところがあると思うのですが、自分の側にある証拠を適切に保全しないことに対するsanctionは重大で(制裁金、相手側のコスト負担、弁護士の活動制限(例:Argumentの時間制限)、さらにはそれだけで敗訴になることすらあります。CCP §2230等)訴訟戦略においても、Discovery対策は重要な位置を占めます。

特にe-Discoveryについては、電子情報の保全という技術的にも難しい点もありますし、今日における電子情報の重要性に鑑み、米国においては注目されているトピックです。

今回のオピニオンにおいては、この関連する情報がなくなっており、証拠の保全がされていないという事実は過失(negligent)が推定されること、状況によっては、重過失や故意であると認められる場合もあると述べられ、さらに、以下のような措置をとる必要があることを述べています。

1.訴訟が実際に始まる前の段階で、訴訟が開始されることが「合理的に予想される」場合には、書面により、legal hold notice(これ以降証拠を変更、処分、処理をすることができなくなること)を出す義務があること。
2.弁護士の監督の下に保管義務のある者(custodian)が関連証拠を保全するよう促すこと。
3.当該当事者の占有下、支配下にあるものであれば、従業員や取締役等の証拠(潜在的に関連のあるものも含む。)であっても、これを保全する義務があること。
4.バックアップテープについても保全する義務がある場合があること。
5.当該保全行為については、真摯に正確であること(scrupulous accuracy)を表明する必要があること。
6.当該保全行為について関与した者でかかる過程をしっかり認識している者がいつでも出廷して証言できるように準備しておくこと。

訴訟となる可能性のある紛争を抱えている企業はもちろん、そうでない企業も、少なくとも自社の文書管理規程(document retention policy)を、このオピニオンに基づいて、整理しておく必要があると思われます。


最後に、今回の投稿のタイトルについて疑問に思われた方のために、Zublakeというのは、これまでe-Discovery手続きの指針となっていた6年前のZubulake v. UBS Warburg, のケースのことで、このときにオピニオンを書いたJudgeと同じJudgeが書いたオピニオンということでも、今回の判断は注目されています。

3.16.2010

Social Media in Employment



所属するローファームで行われた表題のセミナーの概要です。

背景:アメリカでは、55%の従業員がソーシャル・ネットワーキング・サイト(Facebook, Twitter等)に週一度以上はアクセスしており、そのうち15%は勤務時間中に見たことがあるとのこと。

対策:
1.何が許され、許されないかの雇用者の明確なルールが必要(例:PC等設備が雇用者にあること、当該設備の私的利用に対してプライバシー権を主張することができないこと、雇用者がかかる利用を監視する権利があること、差別的発言、ハラスメントの禁止等)。
2.服務規律等がソーシャル・ネットワーキング・サイトへのアクセスという場面でもあてはまること(例:児童ポルノ所持・閲覧、特許・著作権で保護される情報・営業秘密の漏洩、名誉毀損、職務怠慢)。
3.これらのことについて、従業員からの同意を得ておくこと(黙示の同意が認められる場面もありますが、書面で得られるのであれば、得ておいたほうが良いのは言うまでもありません。)。
4.これらのことについて、従業員に対する研修等で理解を徹底させること(違反例の共有をしたり、一方的に押し付けるのではなく、雇用者にとっての必要性があること(下記5.参照)を強調することが効果的かと思われます。)。
5.雇用者の義務があることの理解(他の従業員等から、監視を怠っているとして訴えられる可能性もあります。Doe v. XYZ Corp., 887 A.2d 1156 (NJ Super. 2005)参照。)。
6.監視は、雇用者のビジネス、他の従業員に関係するもののみに限定されること。
7.その他関連する法律(Federal Electronic Communications Privacy Act, (Exceptions: Provider Exception Prior Consent, Business Use Exception, Inadvertent Interception)、National Labor Relations Act (policy bargain))への理解。
8.サイトの削除が必要な場合には、当該サイトの"terms of use"規定に従うこと。
9.必要に応じて、関連官庁への報告を行うこと。

Initial Public Offerings 101


アメリカでIPO (Initial Public Offerings)の留意点

IPOプロセスの全てをここに記載する事は不可能ですが、実務上主な点、留意点、日本のプラクティスとの違い(私が知っている範囲でですが。)を中心に書き留めます。

1.準備期間:ケースバイケースではあるものの、特に途中で作業停止期間(実際はマーケットの状況に応じてストップする事もよくある。)や通常の作業以外の作業がなければ、準備を初めてからPricingまで、4〜6ヶ月
特に、日本との大きな違いは、SEC(日本の財務局)が行うレビューが詳細であるという事です。1ヶ月のレビュー期間の後、多いときには200以上のコメントがあり、それに全て対応する必要があります(変更しないとしても、何故変更しないのかの理由を明示する事も含む。)。最初の届出書提出から多いときには、5,6回変更届出書を提出することになります。

2.発行体(Issuer)がなすべきこと
(1) Board Resolution
(2) Registration Statement (有価証券届出書に相当)のドラフト
(3) D&O Insuranceへの加入又は変更
(4) SOX法への対応
(5) Financial StatementのAuditを依頼
(6) (必要に応じて)株式のリストラクチャリング(如何にValuationをするかにより、株式分割(stock split)、株式併合(reverse stock split)を行う)
(7) Registration Rightsがある場合の対応(通知を出したり、それにより参加を表明する株主への対応)
(8) Due Diligence (Back up materialsの整理(日本では、外国発行体ものに携わる事が多かったので、日本の内国会社のIPOもそうなのかもしれませんが、全ての届出書の記述に、証拠(Back up materials)を用意するのはかなりの作業量となります。)、Website等PR資料の精査(Gun Jumpingに抵触する記載の削除、変更等))
(9) (必要に応じて)Preferred Sharesがある場合のCommon Stockへの変更
(10)  (必要に応じて)株主総会決議事項の総会決議(上場後にするよりも簡潔に済むという意味合い。)
(11) 取引所(NYSE/NASDAQ等)への連絡、取引所で用いるsymbolの予約
(12) Transfer Agent(名義書換代理人)の選定

3.引受会社(Underwriters)がなすべきこと
(1) Underwriting Agreement(10b-5対策, negative assurance)のドラフト,交渉
(2) Officers, Large ShareholdersとのLock Up Agreements(通常は180 days)のドラフト、交渉
(3) FINRA filing(引受契約の公平、公正を担保するために提出する書類)

4.会計事務所(Auditor)がなすべきこと
(1) Regulation SXに基づくFinancial Statementの準備
(2) UWに宛てたComfort Letterの作成

In re Dow Chemical Company Derivative Litigation



Derivative Lawsuitに際して行うDemandが必要である(futileではない)と判断したDelaware Chancery Courtの事案。(C.A. No. 4349-CC, 2010 WL 66769 、Del. Ch. Jan. 11, 2010)
既に、各Law Firmにおいてメモランダムが出ていると思いますので、詳細はそちらに譲ります(かかるメモをご覧になりたい方は、お手数ですが私までご連絡下さい。)が、本件は、Dow Chemical Company ("Dow")が、Rohm & Haas("R&H")と2008年にMerger Agreementを締結したところ、その後の経済状況のためDowに損失が発生し、それに対して、Dowの株主がDowのDirectors, Officersに対して、Derivative lawsuit(代表訴訟)を提起した事案です。

基本的に、株主がDerivative Lawsuitを提起する場合には、Directorsに対してあるClaimを実行するようDemandを行うのが通常ですが、かかるDemandがfutile(無駄な)であると株主が判断した場合には、Demandを行わずに直接Derivative Lawsuitを提起する事が出来ます。

本件も株主がDemandを行わずにDerivative Lawsuitを提起し(多くの場合がそう)、Demandがfutileであるかが争われた事案です。この論点の判断には、従前通りAronson testが使われ、(i) a majority of the directors who approved the transaction in question were disinterested and independent,という点も 、(ii) the transaction was the product of the board's good-faith, informed business judgmentという点も、
Plaintiffの立証が不十分であるとの結論をみました。

留意点としては、(i)の点については、outside business relationship or personal relationshipsはindependenceの欠如の主張としては不十分であること、(ii)の点については、regardless of whether it is an isolated transaction or part of a larger transformative strategyと述べ、"bet the company"のような大きなディールであっても判断基準に差異はない事を明確にした点です。

また、(ii)の点について、最近の re Citigroup, Inc. Shareholders Litigation, 964 A.2d 106 (Del. Ch. 2009)において、 the court held that such "substantive second-guessing of the merits of a business decision...is precisely the kind of inquiry that the business judgment rule prohibits."と述べている点も影響しているものと今回の判断に影響しているものと思われます。